和歌祭の面掛行列は、現在百面(ひゃくめん)と呼ばれることが一般的である。この呼び方は近代になって広まったもので、江戸時代では面掛(めんかけ)、仮面被(かめんかぶり)などと呼ばれている。面掛はその呼び名一つとっても、江戸時代とそれ以降とでは異なる点が少なくない。
例えば面掛では飾りを付けた傘を手にするが、しかしこれは江戸時代にはなかった持ち物で、近代になってから風流傘(ふりゅうがさ)という芸能の要素が追加されたものらしい。また高下駄も江戸時代にはなく、これも田楽(でんがく)という芸能の要素が加わったもの。また子どもを驚かせ泣くと病気をしないという獅子舞に似た所作もあるが、これも近代になって追加されたもののようだ。そして現在、仮面を頭に乗せて、顔にフェイスペインティングを施して仮面性を獲得するという大きな変化が生じている。
面掛は古い要素と新しい要素を組み合わせながら、行列の祝祭性を保つ役割を担うために進化し続けている。(学芸員大河内智之)
→企画展「奇跡の仮面、大集合!―紀州東照宮・和歌祭の面掛行列―」
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→和歌山県立博物館ウェブサイト