今日(14日)、13時30分から、4回目のミュージアム・トークを行いました。25人の方にご参加いただきました。
初公開の和歌浦図屛風の前で説明しているところ
今回は、この初公開の和歌浦図屛風(県博本)を紹介します。
和歌浦図屛風(わかうらずびょうぶ)
展示番号20
6曲1隻
紙本金地著色
各縦106.1㎝ 横274.4㎝
江戸時代前期
和歌山県立博物館蔵
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和歌の浦の景観を描いた名所図屛風です。比較的濃い彩色で丁寧に描写され、砂州や遠景の一部に金砂子を用いているものの、大半は金箔を貼った金雲を全体にたなびかせています。
左側には紀三井寺・布引松(ぬのびきのまつ)、右側には天満宮と東照宮を連想させる建物を描いています。
紀三井寺に描かれた三重塔、布引松が生えた長い砂州がみえます。
(紀三井寺境内)
(布引の松)
また、天満宮らしき社殿の前に建つ鳥居の前の浅瀬には、一羽の鶴と葦原(あしはら)が描かれています。
こうした構図は、中世以前の和歌の浦の景観を連想させるものです。
一方、天満宮の前を練り歩く風流踊(ふりゅうおどり)ともいえる大母衣(おおほろ)やささら踊りなどは
和歌祭の行列を連想させます。ただ、行列の後半は大名行列を連想させる形態になっています。
同じような構図のものが、和歌山大学紀州経済文化史研究所(和大本)と東京国立博物館(東博本)に残されています。たとえば、和大本(展示番号21)で天満宮周辺は下のように描かれています。
県博本と和大本とは、描かれた建物の配置や人物の描写がかなり類似していることがわかります。制作時期もほぼ同じころ(17世紀中ごろ)で、同じ工房で制作された可能性が濃いようです。ただ、現状では端が切り取られているため、画面が不連続となり、少し小振りとなっていいます(各縦98.3㎝、横235.2㎝)。
これらとは別に、東京国立博物館にも構図が類似し、厳島図(いつくしまず)とセットになった「和歌浦図屛風」が残されています。
この点から、これらの屛風が和歌山以外の地で制作された可能性も想定できます。
次回のミュージアム・トークは最終日20日(日)13時30分から行います。この日は、ミュージアムトーク終了後、エントラスホールで、県立文書館主任の溝端佳則氏によるパネルでトークも行います。
(主任学芸員 前田正明)
→和歌山県立博物館ウェブサイト