現在開催中の特別展、
「桑山玉洲のアトリエ―紀州三大文人画家の一人、その制作現場に迫る―」では、
会期中に大幅な展示替えをおこないます。
会期をおよそ半分に分け、
前期展示が、4月27日(土)~5月12日(日)
後期展示が、5月14日(火)~6月2日(日)
となっております。
展示替えのリストはこちらです。
→「桑山玉洲のアトリエ」展示資料目録
そんなわけで、前期展示は残すところあと3日となりました。
前期展示の見どころとしましては、何と言っても、
玉洲が集めていた中国の絵と、玉洲自身が描いた絵を、横に並べて比較しながら見られるというところです。
(画像をクリックすると拡大します)
上の写真は、右から
①「墨梅図(ぼくばいず) 蔡簡(さいかん)筆」
②「墨梅図(ぼくばいず) 桑山玉洲筆」
③「梅花書屋図扇面(ばいかしょおくずせんめん) 杜垣(とえん)筆」
④「梅花書屋図(ばいかしょおくず) 桑山玉洲筆」
⑤「朱竹図(しゅちくず) 雪僲(せっせん)筆」
⑥「朱竹図(しゅちくず) 桑山玉洲筆」
です。
①・③・⑤は、いずれも玉洲が集めて持っていた中国の絵で、
②・④・⑥は、それぞれ、右の中国の絵に基づいて玉洲が描いたとみられる玉洲自身の絵です。
こんなに3セットも、元ネタのわかる絵が並んで見られるのは、前期展示だけです。
ぜひ、じっくり見比べながらご覧ください。
また、玉洲の初期の画業をご紹介する部分では、
(画像をクリックすると拡大します)
上の4点の掛軸のうち、3点が展示替えで入れ替わってしまいます。
一番右の「蘆間舟遊図(ろかんしゅうゆうず) 桑山玉洲筆」は、玉洲の最も最初期の作例として重要ですし、
一番左の「旭日群鶴図(きょくじつくんがくず) 桑山玉洲筆」は、群れて飛ぶ125羽の鶴が、とても細かく、また、かわいらしく描かれていて、オススメです。いずれも、前期展示のみの展示となります。
一方、玉洲の大作で、代表作でもある、念誓寺(ねんせいじ)の襖絵も前期後期で大幅な入れ替えがあります。
前期展示では、
(画像をクリックすると拡大します)
(画像をクリックすると拡大します)
上の「山水図襖 8面」と下の「富岳図襖 4面」を展示しています。
いずれも、現存する玉洲の最大の作品として貴重です。
このほか、
(画像をクリックすると拡大します)
今回、初公開となる、白浜周辺の温泉地や珍しい風景を描いた「鉛山勝概図巻(かなやましょうがいずかん) 桑山玉洲筆」も前期後期で巻き替えをおこないますので、前半部分にあたる、三段壁や千畳敷の部分は、12日までしか見られません。
さらには、
(画像をクリックすると拡大します)
玉洲の菩提寺(ぼだいじ)である和歌浦にある宗善寺(そうぜんじ)に伝わった「書画貼交屏風(しょがはりまぜびょうぶ)」は、やはり玉洲が集めた書画などを貼った屏風とされるものですが、中には、琉球使節(りゅうきゅうしせつ)や朝鮮通信使(ちょうせんつうしんし)で日本を訪れた人々の書画が含まれています。ちょうど、琉球使節や朝鮮通信使の書画が貼られている右隻(うせき)は、前期展示のみです。
また、
(画像をクリックすると拡大します)
玉洲より1歳年下で、同じく和歌山出身の文人画家である野呂介石(1747-1828)が、玉洲の家を訪れたときに玉洲と一緒に描いた2幅対の掛軸「山水図 桑山玉洲・野呂介石筆」も、前期だけの展示となっています。
前期・後期を通して展覧会を見ていただくことで、玉洲のアトリエや、玉洲の絵画制作のあり方が、より分かりやすくご理解いただけるのではないかと思います。
もう、まもなく終了する前期展示を、ぜひ、お見逃しなく。(学芸員 安永拓世)
→特別展 桑山玉洲のアトリエ―紀州三大文人画家の一人、その制作現場に迫る―
→和歌山県立博物館ウェブサイト