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スポット展示「日本刀鑑賞入門 よみがえった赤羽刀(あかばねとう)」

博物館の収蔵品について広く知っていただくために、博物館の2階で収蔵資料の一部を無料で公開している「スポット展示」。
今回の「スポット展示」では、初の試みとして、日本刀について、少しご紹介してみましょう。
というのも、現在開催中の企画展「未来へ伝えよう私たちの歴史―文化財の魅力発見!―」では、和歌山最小の太刀とみられる重要文化財の「黒漆小太刀 中身銘有次(くろうるしこだち なかみめいありつぐ)」(滝尻王子宮十郷神社蔵)と、和歌山最大の太刀とみられる「大太刀(蓮井象之助所用)(おおだち(はすいぞうのすけしょよう)」(正住寺蔵)が展示されているからです。
(これらの太刀については、こちらをご参照ください。)
とはいえ、これほど小さな太刀や、これほど大きな太刀は、あまり一般的ではありませんから、ふつうの刀の大きさと比較していただくためにも、この「スポット展示」では、より一般的な大きさの刀として、次の「刀 銘 紀伊国康広(かたな めい きいのくにやすひろ)」を取り上げてみました。
日本刀鑑賞入門 よみがえった赤羽刀(あかばねとう)
【会期:2013年7月20日(土)~9月1日(日)】
刀 銘 紀伊国康広 (館蔵) 展示状況(軽)
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第二次世界大戦後、日本を占領していた連合国軍(GHQ)に没収された刀剣は、当時、東京の赤羽(あかばね)にあった連合国軍の倉庫に保管されたため、「赤羽刀(あかばねとう)」と呼ばれます。これらは、のちに日本政府へ返還されましたが、大半は、元の所有者がわからず、そのまま国で保管されてきたのです。ところが、戦後50年たった平成7年(1995)から、全国の公立博物館などに譲り渡され、広く活用されることとなりました。
和歌山県立博物館では、和歌山ゆかりの刀剣など、計43点を譲り受け、順次、刀剣を研(と)ぎ直して、修復を進めています。この刀も、そうしたものの一つで、美しい姿がよみがえりました。
◆刀 銘 紀伊国康広
(かたな めい きいのくにやすひろ)
刀 銘 紀伊国康広 (館蔵) 刀身全景
刀 銘 紀伊国康広 (館蔵) 茎銘(軽) 刀 銘 紀伊国康広 (館蔵) 刀身中央部(軽) 刀 銘 紀伊国康広 (館蔵) 鋒(軽)
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   1口
   鉄製鍛造
   江戸時代(17世紀)
   全長90.6㎝ 刃長68.3㎝ 反り1.4㎝
   和歌山県立博物館蔵
「紀伊国康広」という銘(めい)から、江戸時代前期ごろに活躍した康広(やすひろ)という刀工(とうこう)が、紀伊国で作った刀であることがわかります。
康広は、安広(やすひろ)という刀工の兄弟であるという説もあり、安広は、一時期、紀伊藩に召(め)し抱えられていた刀工です。そうした点から、この刀は、紀伊藩とのかかわりをうかがわせる貴重な資料であるともいえるでしょう。
刃文(はもん)は、全体にゆったりと波打った「のたれ(湾れ)」と呼ばれる刃文で、リズミカルな中にも、美しさがあります。
◆刀の部分のなまえを知ろう!
刀 図解
(画像をクリックすると拡大します)
刀の部分を示す名前などは、日頃は使わないような、難しい用語が多いですし、どこを指しているのかわかりにくい場合も少なくありません。そうした刀の部分の名称を、展示では上のようなパネルを使って、できるだけわかりやすくご紹介しています。
◆刀の魅力はどこにある?
刀は、もちろん武器ですが、歴史を物語る文化財(ぶんかざい)であり、また、美しさを追求した美術工芸品(びじゅつこうげいひん)でもあります。そうした点に注意しながら、刀を見てみると、少しは刀の魅力がわかってくるかもしれません。
◇刀の持ち手の部分(茎(なかご))に彫られた銘(めい)から、制作地や制作者がわかります。
◇刃の部分にあらわされた波のような刃文(はもん)は、刀の一番のみどころです。
◇刃文ではない地(じ)の部分にも、よく見ると細かい年輪のような模様があり、とても美しいものです。
◆もっと日本刀を知りたい人は、夏休み講座へ!
現在開催中の企画展に関連して、「夏休み講座」を開催します。
その「夏休み講座」の2回目は、日本刀の魅力をわかりやすくご紹介する講座です。
夏休み講座②「日本刀鑑賞入門」
8月10日(土) 13:30~14:30
博物館2階学習室

日本刀や刀について、少しでも興味のある方は、ぜひ、ご参加ください。(学芸員 安永拓世)
→和歌山県立博物館ウェブサイト
→企画展「未来へ伝えよう私たちの歴史―文化財の魅力発見!―」
→これまでのスポット展示

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