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コラム 紀州の画家紹介 8 祇園南海(ぎおんなんかい)

企画展「江戸時代の紀州の画家たち」の関連コラム
「紀州の画家紹介」
8回目にご紹介するのは、祇園南海(ぎおんなんかい)です。
祇園南海(ぎおん・なんかい)
◆生 年:延宝4年(1676)
◆没 年:寛延4年(1751)9月8日
◆享 年:76歳
◆家 系:江戸の紀伊藩の医師である祇園順庵(ぎおんじゅんあん、?~1696)の長男
◆出身地:江戸
◆活躍地:江戸・紀伊
◆師 匠:絵は独学
◆門 人:祇園尚濂(ぎおんしょうれん、1712~91)(二男)・池大雅(いけのたいが、1723~76)?
◆流 派:初期文人画
◆画 題:花鳥(墨竹・墨梅・墨蘭など)・山水・人物など
◆別 名:与一・与一郎・余一・余市・正卿・貢・瑜・阮瑜・元瑜・源瑜・伯玉・汝斌・汝份・汝彬・汝彣・鉄冠道人・湘雲主人・箕裾散人など
◆経 歴:紀伊藩の儒学者、文人画家。元禄2年(1689)、江戸の儒学者である木下順庵(きのしたじゅんあん、1621~98)に入門し、新井白石(あらいはくせき、1657~1725)らとともに学び、詩文に才能を発揮。元禄3年(1690)、紀伊藩2代藩主の徳川光貞(とくがわみつさだ、1627~1705)から詩の才能を褒められ時服を拝領。元禄10年(1697)、前年末に亡くなった父の跡を継いで、「儒者並」となり、地方200石をもらう。元禄13年(1700)、紀伊藩3代藩主の徳川綱教(とくがわつなのり、1665~1705)から「不行跡」として知行を没収され、和歌山城下追放となり、那賀郡貴志荘長原村(現在の紀の川市貴志川町長原)に謫居(たっきょ)。宝永7年(1710)、紀伊藩5代藩主の徳川吉宗(とくがわよしむね、1684~1751)から赦免され、和歌山城下に戻る。正徳元年(1711)、「文才」を認められ、20人扶持となる。同年、江戸へ行き、新井白石などと会う。同年、朝鮮通信使と筆談し、応接。正徳2年(1712)、朝鮮通信使との筆談の功績を認められて、「御近習」となり、地方200石を回復。正徳3年(1713)、藩校の湊講館(みなとこうかん)が開設し、教授となる。享保2年(1717)、紀伊藩6代藩主の徳川宗直(とくがわむねなお、1682~1757)から、川合刑部元屋敷をもらう。元文5年(1740)、年々金20両をもらう。寛延3年(1750)、池大雅の訪問を受ける。後世に日本の初期文人画家として高く評価され、池大雅などにも大きな影響を与えた。
◆代表作:「墨梅図(ぼくばいず)」(個人蔵)、「墨蘭図(ぼくらんず)」(和歌山県立博物館蔵)、「蘭竹石図(らんちくせきず)」(個人蔵)元文元年(1736)、「天台石橋図(てんだいしゃっきょうず)」(個人蔵)、「峰下鹿群図(ほうかろくぐんず)」(個人蔵)、「冬景山水図(とうけいさんすいず)」(和歌山市立博物館)享保17年(1732)、「美人石上読書図(びじんせきじょうどくしょず)」(個人蔵)など
今回展示している作品をご紹介しましょう。
まずは、「墨竹図」(和歌山県立博物館蔵)。
祇園南海筆 「墨竹図」 (和歌山県立博物館蔵) 軽
(以下、いずれも画像をクリックすると拡大します)
祇園南海筆 「墨竹図」 款記 (和歌山県立博物館蔵) 軽
款記は「年久孫枝秀/露濃弈葉繁/元瑜」で、
祇園南海筆 「墨竹図」 印章1 (和歌山県立博物館蔵) 軽 祇園南海筆 「墨竹図」 印章2 (和歌山県立博物館蔵) 軽  祇園南海筆 「墨竹図」 印章3 (和歌山県立博物館蔵) 軽
印章は「阮瑜之印」(白文方印)、「白玉氏」(白文方印)、「風雨孕山」(朱文長方印)、
祇園南海筆 「墨竹図」 印章4 (和歌山県立博物館蔵) 軽 祇園南海筆 「墨竹図」 印章5 (和歌山県立博物館蔵) 軽
右上の遊印は「竹溪弌逸」(朱文円印)、「宜假」(白文円印)です。
続いて、「墨蘭図」(和歌山県立博物館蔵)。
祇園南海筆 「墨蘭図」 (和歌山県立博物館蔵) 軽
祇園南海筆 「墨蘭図」 款記 (和歌山県立博物館蔵) 軽
款記は「幽谷誰知霜雪裏/美人弌笑吐清香/湘雲居士写併書」、
祇園南海筆 「墨蘭図」 印章1 (和歌山県立博物館蔵) 軽 祇園南海筆 「墨蘭図」 印章2 (和歌山県立博物館蔵) 軽 祇園南海筆 「墨蘭図」 印章3 (和歌山県立博物館蔵) 軽
印章は「源瑜之印」(白文方印)、「一片氷心在玉壺」(朱文方印)、「行雲流水」(白文円印)
祇園南海筆 「墨蘭図」 印章4 (和歌山県立博物館蔵) 軽 祇園南海筆 「墨蘭図」 印章5 (和歌山県立博物館蔵) 軽
左脇の遊印は「宜假」(白文円印)、「竹溪弌逸」(朱文円印)です。
続いて、「美人石上読書図」(個人蔵)。
祇園南海筆 「美人石上読書図」 (個人蔵) 軽
祇園南海筆 「美人石上読書図」 款記 (個人蔵) 軽
款記は「梧桐陰暗石苔疎/永昼無人庭院虚/静訂回文錦字譜/不倣二喬読兵書/阮瑜画併題」、
祇園南海筆 「美人石上読書図」 印章1 (個人蔵) 軽 祇園南海筆 「美人石上読書図」 印章2 (個人蔵) 軽 祇園南海筆 「美人石上読書図」 印章3 (個人蔵) 軽
印章は「阮瑜之印」(白文方印)、「白玉氏」(白文方印)、「風雨孕山」(朱文長方印)です。
最後は、今回の展示で初公開となる「龍門石詩巻」(個人蔵)。
祇園南海筆 「龍門石詩巻」 (個人蔵) 展示画像 軽
祇園南海筆 「龍門石詩巻」 款記1 (個人蔵) 軽
最初の款記は「祇洹阮瑜書」で、
祇園南海筆 「龍門石詩巻」 印章1 (個人蔵) 軽 祇園南海筆 「龍門石詩巻」 印章2 (個人蔵) 軽 祇園南海筆 「龍門石詩巻」 印章3 (個人蔵) 軽
印章は「源瑜之印」(白文方印)、「湘雲主人」(朱文方印)、「科頭箕踞」(白文楕円印)です。
祇園南海筆 「龍門石詩巻」 款記2 (個人蔵) 軽
続いての款記は「辛未夏至之日/鐵冠道人南海/阮瑜為森叟/題」で、
祇園南海筆 「龍門石詩巻」 印章4 (個人蔵) 軽 祇園南海筆 「龍門石詩巻」 印章5 (個人蔵) 軽 祇園南海筆 「龍門石詩巻」 印章6 (個人蔵) 軽
印章は「騎龍」(白文方印)、「白玉氏」(白文方印)、「鏡華水月」(朱文長方印)です。
祇園南海筆 「龍門石詩巻」 款記3 (個人蔵) 軽
最後の款記は「辛未之夏日/賦贈森叟/唐嶼居士稿」で、
祇園南海筆 「龍門石詩巻」 印章7 (個人蔵) 軽 祇園南海筆 「龍門石詩巻」 印章8 (個人蔵) 軽 祇園南海筆 「龍門石詩巻」 印章9 (個人蔵) 軽
印章は「唐嶼」(白文方印)、「長劔倚天外」(朱文方印)、「難与俗人言」(朱文重郭長方印)です。
このように、今回の展示では、南海の書画の代表作を選んで展示しています。
「墨竹図」や「墨蘭図」は、南海が得意とした主題ですし、「美人石上読書図」は、南海の数少ない人物画の作例で、なおかつ、女性を描いた作例では、現存唯一のものです。
一方、初公開の「龍門石詩巻」の巻頭にある「龍門石」の書は、まるで絵のような圧倒的なデザインを見せてくれます。
詩書画に優れた南海の造形美のすばらしさを、ぜひご堪能ください。(学芸員 安永拓世)
江戸時代の紀州の画家たち
和歌山県立博物館ウェブサイト

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