本日、6月23日は、企画展「箱と包みを開いてみれば―文化財の収納法―」の
3回目のミュージアムトーク(展示解説)がおこなわれました。
ここのところ、雨や嵐が続いていましたが、今日は、少しは天気が回復し、曇り空の一日。トークへの参加者は、5名でした。
例の通り、参加人数は少なかったのですが、今回は、こうした文化財の収納法などについても詳しい方や、興味を持っておられる方が参加してくださっていたこともあり、質問へお答えしながらのトークとなりました。
トークの風景はこんな感じです。
(画像をクリックすると拡大します)
ご参加いただいたみなさま、お忙しい中、お付き合いくださり、ありがとうございました。
トーク終了後は、
「日ごろは、裏方で活躍している箱や包みに光をあてたこうした展示は、全国的に見ても珍しいですよね?」
というご意見をいただきました。
こちらも、全国の展覧会などを十分に把握できているわけではありませんが、たしかに、茶道具や大名道具などの展示で、その箱や包みが資料と一緒に展示され、伝来や由緒の正しさを示すことは、ときどき全国の博物館や美術館の展示でもおこなわれていますが、これだけ、箱や包みに焦点をしぼり、文化財の収納法や箱の役割を、メインテーマにしてご紹介した展示は、たしかに珍しいかもしれません。
ご意見をいただいた方は、東京から来られていて、文化財の収納法や箱の果たしてきた歴史的な役割に、かなり興味や関心をお持ちの方で、色々とご研究されているようでしたが、そんな方でも
「こうした展示は見たことがない」とおっしゃっていました。
「一般の方々にとっては、文化財がどのような形で守られてきたかということについて、なかなか知られていないと思うので、こうした展示をくりかえしやってほしい」とのご意見でした。
今回の展覧会は、今年の春の特別展「災害と文化財」に引き続き、
「どのように文化財を守っていくか」
ということを、展示を通してみなさまへお伝えするという目的で企画したものです。
地震や風水害などの災害が起きてから、被災した文化財を救出したり、修復したりすることも、もちろん大切ですが、日ごろから、災害や防犯への備えが必要であることをお伝えするのも、博物館にとっては、重要な使命であると考えています。
「きちんと、昔から伝えられてきた方法で収納する」
という、わたしたちにでもできる身近な取り組みが、最終的には、文化財を守ることにもつながるということを、少しでもご理解いただければと思っております。
また、こうした博物館の取り組みは、来年(2013年)の3月9日~4月21日の会期で開催される、
当館の企画展「文化財受難の時代―いかに守るか―」でも、
文化財の防犯対策などについて、あらためてご紹介したいと考えております。こちらもあわせて、ご参照ください。
ところで、さきほど、ご意見をいただいた方からも、「今回の展示の内容が、1冊にまとまった参考文献のようなものはありますか?」と聞かれましたが、残念ながら、一般的な書籍を含めて、1冊にまとまったものはありません。
また、以前、この「博物館ニュース」にもご質問があり、「今回の展示の図録はありますか?」というお問い合わせがありました。こちらも、残念ながら、図録は発行しておりません。
ただ、こうした箱や包みが持つ存在感や、中の文化財を守ってきたという実感は、書籍や図録などではお伝えできない、逆にいえば、展示を通してのみしかお伝えできない部分ではないかとも考えています。
担当者の私自身も、今回の展示にあたっては、色々と試行錯誤を重ね、迷いながら展示した部分もありました。箱や包みの役割や魅力を、展示で十分にお伝えできているのかどうかわかりませんが、そうした意味でも、ぜひ、博物館にご来館いただいて、箱や包みの存在感と、中の文化財を守ってきたという威厳を感じ取っていただければと思います。
さて、次回以降のトークは次の3回です。
7月1日(日)、7月7日(土)、7月15日(日)
時間は、7月7日以外は、13時30分から1時間程度
7月7日のみは、14時から1時間程度を予定しています。
ぜひ、ふるってご参加ください。(学芸員 安永拓世)
→企画展 箱と包みを開いてみれば―文化財の収納法―
→和歌山県立博物館ウェブサイト