本日、1月15日は、企画展「ハンコって何?」の4回目のミュージアムトーク(展示解説)がおこなわれました。
今日も、寒い日でしたが、今回はいつもよりも多く、18名の方にご参加いただきました。
トークの風景はこんな感じです。
ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。
今回は、専門的な篆刻家(てんこくか)の先生方が、何名か参加しておられたこともあり、色々と、こちらの展示のいたらない点や、展示の間違いなどをご指摘いただきました。
ご指摘いただいた大きな間違いとしては、
印矩(いんく)というハンコを押すときにハンコがゆがまないようにするL字形の道具の置き方が逆になっていたことです。
間違った印矩の置き方
印矩は、L字の長い方が下になるように左手に置いて、定規のようになっている部分をハンコの左側と下側にそえてハンコを押すと、ねらった場所に正確にゆがまずハンコが押せるという道具です。
印影のつきが悪いときでも、印矩をそのまま動かさずに固定しておけば、もう一度ハンコに朱肉をつけて、再度印矩にそえてハンコを二度押しすることができる便利な道具です。
印矩を左手で押さえて、右手にハンコを持って押すわけですから、この置き方では、印矩を正確に使えませんね…。申し訳ございませんでした。
早速、閉館後に置き方を訂正しておきました。
正しい印矩の置き方
印矩については、また、「ハンコの基礎知識」のコーナーで、印つきや使い方などをご紹介したいと思っています。
もう一つのご指摘は、関防印(かんぼういん)の名称について。
関防印とは、中国では、文書の改竄(かいざん)を防ぐために押す割り印のことで、「○○関防」という文字があらわされていました。「関防」とは「印」という意味の、別の言い方です。
そうした関防印を押した文書が日本にもたらされた際、割り印として残された左半分の印影が縦長の長方形になっており、そこに必ず最後の二文字の「関防」の文字があらわされていたことから、「右上に押された縦長の長方形のハンコが関防印なのだ」と誤解されたのだそうです。
すなわち、「関防印」という言い方は、中国の言い方からすると「印印」という意味となり、意味をなさないこととなるわけです。つまり、書などの右上に押され、文章の始まりを示すハンコは、本来的には「引首印(いんしゅいん)」と呼ぶべきだとのご指摘でした。
これまで、関防印で統一してきただけに、何やら複雑になってしまいますが、ごもっとものご指摘でありますので、この場でご紹介させていただきます。
なお、日本では、多く、間違ったまま、「関防印」と呼ばれることの方が多いようですし、今回の展示のキャプションの統一の都合上、展示室のキャプションについては逐一訂正いたしませんが、どうかご了承くださりませ。
いずれにせよ、色々と、貴重なご意見をありがとうございました。
今回の展示には、反映できなかった点もございますが、今後の博物館の展示に活かしていきたいと思っております。
ご指摘、ご指導いただきました先生方、ありがとうございました。
さて、こんな風に、ときどき間違いのある(?)「ハンコって何?」トークですが、
残すところ、あと1回。
1月21日(土)のみです。
時間は13時30分から1時間程度を予定しています。
不充分な点もございますが、皆さんと一緒に、少しでもハンコを見る楽しみを味わっていきたいと思っております。
「ハンコって何?」展の最後のミュージアムトークに、ぜひ、ご参加いただき、色々と皆さんのご意見をお寄せ下さい。(学芸員 安永拓世)
→企画展 ハンコって何?
→和歌山県立博物館ウェブサイト