和歌山県立博物館友の会マイミュージアムギャラリー
第18回展示 「宝物は歓喜寺の屋根裏に」
【出 陳 者】 石井 秀幸
【展示期間】 平成22年4月17日(土)?6月11日(金)
【出陳資料】 歓喜寺境内図銅板印刷原板 明治時代
【資料をめぐる思い出】
「以前、歓喜寺本堂の屋根の修理と瓦の葺き替えが行われました。その際、屋根から、雨漏りの修理用の材料として使われていたこの銅板が見つかったそうです。いったん寺外で保管されていましたが、私が歓喜寺の住職となったあと、返却されてきました。
よく見ると歓喜寺の境内のようすが細かく描かれています。なぜこれが屋根の修理の材料に使われたのか首をひねるところですが、今は大事な寺宝です。
その後、本堂脇にある、下品堂の屋根替えを行いました。今度は銅板ではなく、延宝2年(1674)の棟札が見つかりました。」
【学芸員の一口メモ】
これは明治時代に作られた、銅板印刷の原板です。銅の板に図柄を彫刻し、その溝にインクをのせ、余分なインクを拭き、紙をあててプレスします。そのため印刷部分がやや盛り上がるのが特徴で、細かな部分の再現性に富んだシャープな仕上がりをみせます。
この原板を製作したのは大阪大成館銅板部で、明治時代頃、この種の印刷に関わった印刷所のようです。同社による原板は現在、紀ノ川市の興山寺にも残されていることが確認できており、また刷りだしたものとしては粉河寺境内図が確認されています(和歌山大学紀州経済史文化史研究所蔵)。 他にも県内各地の多数の寺社の境内図も作られたらしく、それらをまとめた冊子として『大日本名所図録和歌山県之部』が明治32年(1899)に大成館から発行されています。
(『大日本名所図録和歌山県之部』に掲載された歓喜寺境内図。この銅板から刷り出されたもの。)
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