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永代売渡申田地之事(館蔵品261)

永代売渡申田地之事(館蔵品261)
館蔵品の登録名は、近世文書の表題(原題)主義で取っていますが、
中世文書のタイトルにすると、「上田井十郎田地売券」ともいうことができます。
上田井十郎田地売券1 その1  ※画像はクリックで拡大します。
【釈文】
 永代売渡申田地之事
   合一所 加地子米参石五斗取
        夏麦 五斗取 上米壱斗アリ
  限四至 東類地 南ハ道 アサナハ弥六カイト
      西ハやつ谷 北ハ類地 瀬町十地主神領又五郎
 右件之田地者、紀州那賀郡池田庄神領南に
 有之也、十郎下地雖為今用要あるニ、仍
 直銭米参石五斗に限、永代売渡申処実
 正明鏡也、然上者天下一同之御徳政行トモ
 無違乱末代可有御知行候、但本券ハ紛
 失候間、不相副候、若兎角之族有之候者、盗人
 可有沙汰者也、仍為後日証文如件、
   天正十六戊子年九月十一日  売主 上田井十郎(略押)
                           上田井孫右衛門(略押)
                 口入 槙之坊之内
                      右京助(略押)
   高野山小田原奥之坊内買
       玄領坊へ
上田井十郎田地売券2 その2 ※画像はクリックで拡大します。
【釈文】
 永代売渡申田地之事、
   合一所者 加地子ハ 麦弐石取
                 米壱石弐斗取
  限四至 東道、南モ道、アサナハ西山向之ウトノロ
       西ハミソ手、北モミソ、瀬町 四ツ
 右件之田地者、紀州那賀郡池田庄西山田村
 有之也、雖為十郎知行為今用要有、直
 銭米以上合五貫三百文ニ限、永代売渡申処
 実正明鏡也、然上者天下一同之御徳政
 トモ無違乱可有御知行候、但本券ハ刎
 失候間、不相副候、若兎角之族有之候者、盗人
 之可有沙汰者也、仍為後日之証文如件、
                     売主上田井
   天正拾七己丑年卯月二日      十郎(略押)
                    同村
                口入  孫右衛門(略押)
   高野山小原
     奥之坊
【写真・解説】
・『弘法大師と高野参詣』(和歌山県立博物館、2015年)
【内容】
上田井十郎が池田荘(現在の紀の川市)の田地を
高野山小田原谷の奥之坊へ売却した証文です。
上田井(こうだい)は、紀の川市西部に位置し、池田荘のなかに含まれる村です。
その1は、池田荘神領南(紀の川市神領)にある田地を3石5斗で
奥之坊へ売り渡したものです。
なお、口入(仲介)にも高野山槙之坊が関わっていました。
その2も同様に、池田荘西山田村(紀の川市西山田)にある田地を
直銭5貫300文で奥の坊に売り渡した際の証文です。
戦国時代には、高野山上の子院(塔頭寺院)は、山麓の土地を売買により集積していたことがわかります。
(当館学芸員 坂本亮太)

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