□■資料の撮影■□
和歌山県立博物館では、平成22年4月24日(土)?6月6日(日)の会期で、特別展「移動する仏像―有田川町の重要文化財を中心に―」を開催します。この日誌では、その途中経過をお知らせしながら、博物館の業務についてご紹介しています。
2月25日(木)。本日は一日中、写真撮影。先日借用した仏像を中心に、図録などで使用する写真を、ブローニーフィルムと呼ぶ35mmのフィルムより大きなポジフィルムで撮影していきます。まずは博物館内の写場で、大型のストロボを3つ使って、資料を立体的に、細部まで観察できるような写真になるようライティングを行います。いよいよ撮影となると、仏像の場合、全身を正面からだけでなく、斜め、側面、背面、また頭部の正面、斜め、側面も撮影します。一体の撮影を終えるだけでも、シャッターを切るたびに仏像を動かしながらの作業ですから、結構時間がかかります。撮影時は、あらためて資料をじっくり見ることができる機会でもあります。以前の調査で感じた疑問点などをあらためて確認し、新しい発見などもあって、資料の隠れた魅力に気づく貴重な瞬間でもあったりします。デジタルカメラの普及で現像所が減少し、今後のフィルムの供給もどうなるか分かりませんが、フィルムにはフィルムの良さがありますので(フィルムという形あるもので残るということ、中判・大判カメラに匹敵するデジカメは極めて高価なことなど)、中判・大判カメラによるフィルム撮影は博物館・美術館業界ではまだまだ主流です。
撮影終了時には、仏像12体分、計38本のフィルムの山ができあがりました。早速現像に出すための書類を決済にまわします。こういった写真も、貴重な記録として重要な資料となるものですから、現像後はフィルムごとに番号をつけて管理しています。必要に応じて他の博物館や出版社などに写真を貸し出すこともよくあります。できるだけよい写真を撮影してストックしておくことも、地味ですが博物館ならではの大事な役割です。(学芸員 大河内智之)
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