10月7日(木)、かつらぎ町の笠田高校を訪れて、「高野山って、どんなところ?―参詣者を高野山へと導く町石道をたどりながら―」と題してお話してきました。
これは、同校の普通課3年生が総合的な学習の時間「21世紀を自ら歩く」の取り組みで、10月20日に世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産である町石道を歩いて、かつらぎ町天野地区の丹生都比売神社を訪れるのに際して、事前学習としてお声がかかったものです。会場の兼ね合いで3クラスを二つにわけ、50分の講演会を2回行いました。
はじめに世界遺産についての基礎知識を伝えたあと、高野山の入り口である慈尊院と丹生官省符神社、そこを出発点とする町石道の説明。町石については、石のかたち自体が仏をあらわしていること、そしてそれは「曼荼羅」に描かれる仏と対応していることなどを伝えました。実際に歩く際には、そうした視点をもっていると、なんでもないように見える山道の景色が、違う見え方をするのではないでしょうか。
次に高野山の鎮守・丹生都比売神社についての説明。そこでまつられる神さまについて知るために、弘法大師空海がどんな人であったかを紹介。実際の筆跡をみてその実在を実感してもらい、遣唐使として留学し密教を学んできたこと、高野山創建にまつわる神話をお話ししました。また、明治時代を迎えるまでの丹生都比売神社では、境内にお寺も建ち並んでいたことを江戸時代の絵で見てもらいました。現地を訪れた際には、かつての景観を頭の中で復元的に想像しながら、体験してみてほしいと思います。
さらに高野山の壇上伽藍、奥院について紹介。現在でも空海が奥院で生きているという信仰があり、それがどのような意味をもっているのかということや、それが現在でも高野山周辺に暮らす人たちの文化や習慣にまでつながっていることなどをお話しました。
多くが伊都郡・橋本市域に住み、高野山とその文化を身近に感じている生徒さんたちに、自らの地域の歴史や魅力を普段とは違う視点で考えてもらうきっかけになれば、なによりです。(学芸員 大河内智之)