請雨経法(別尊雑記) (館蔵品831)
(巻首) (巻末)
(表書の図像)
(裏書冒頭) (裏書末尾)
(裏書の図像)
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【題】
外題「別尊雑記 請雨法 『人皇』」
首題「成蓮院/請雨経法 「僧正弘基」」
【奥書等】
奥書「元応二年六月十一日黙交之了
『正中二年三月六日奉伝受之了』」
裏書「以式部僧都正筆持本此校之、彼批記云
写本小野僧正御手跡也、成尊僧都ニ被伝授之云々、
天治二年十月八日賜件御本於得大寺法眼御房
奉伝此法了、本尊幷敷曼多羅口伝等同賜之畢、
末資覚任
已上裏書支度口伝池図壇所指図等十通
以威徳寺本書取了、承安二年六月十八日心覚記之 」
【刊本】
『大正新脩大蔵経』図像第三巻(大正新脩大蔵経刊行会、1932年) p114~124
※仁和寺所蔵本を底本とする。
【内容】
平安時代後期の真言宗僧・心覚が撰述した『別尊雑記』57巻のうち、
巻14は請雨経法と呼ばれ、特に雨乞いの修法に用いられました。
真言密教においては、空海が天長元年(824)に神泉苑で祈雨を行ったのを嚆矢として、
請雨は重要な修法と位置づけられていました。
「別尊雑記」を撰述した心覚は、園城寺・醍醐寺で研鑽した後、高野山に入山し、
成蓮院で灌頂を受け、常喜院を開いたことでも知られています。
この資料は上等の斐紙に淡墨の界線を引き、丁寧に書写された巻子本で、
裏書や朱筆までも忠実に写し取っています。
巻末にある元応2年(1320)の点校奥書、ならびに正中2年(1325)の伝授奥書も
原本に記されていたものと思われます。
紙背には承安2年(1172)6月18日の心覚による裏書が記されており、
祖本は心覚自筆の仁和寺所蔵本であった可能性も考えられます。
巻頭の首題下には、摺り消しをおこなったうえで「僧正弘基」の朱印が捺されており、
この資料が一時期、新義真言宗智積院30世の弘基の手元にあったことも窺われます。
(当館学芸員 坂本亮太)