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ハンコの基礎知識「ハンコの文字を読む順番」

年末年始をはさんで、少し間があいてしまいましたが、
今回の「ハンコの基礎知識」は、前回の予告通り、ハンコの文字を読む順番についてご紹介したいと思います。
ハンコの中にあらわされている文字は、文章になっています。長い文章も、短い文章もありますが、文章なので読む順番があります。
普通のハンコは、縦書きのように、右上から右下、左上から左下へ読んでいきます。
普通
これまでにご紹介したハンコを見ながら、復習してみましょう。
七言絶句書 祇園南海筆 落款印「源汝フン印」(陰文方印) 館蔵32(小)「源汝份印」(陰文方印) 風竹図 桑山玉洲筆 落款印「茂松清泉」(陽文方印) 館蔵501(小)「茂松清泉」(陽文方印)
陰文(いんぶん)でも陽文(ようぶん)でも変わりありません。
また、一行の文字が増えたり、行の数が増えても同じです。
風竹図 桑山玉洲筆 遊印「杏樹壇辺漁父桃花源裏人家」(陽文長方印) 館蔵501(小)「杏樹壇辺漁父桃花源裏人家」(陽文長方印)
風竹図 桑山玉洲筆 落款印「桑嗣幹字伯自号玉洲陳人」(陰文方印) 館蔵501(小)「桑嗣幹字伯自号玉洲陳人」(陰文方印)
しかし、一部に、特別な読み順をするハンコがあります。
右上から左上に行き、左下へ下がって右下へもどる、つまり右上から反時計回りで読む読み方です。
回文
こうして反時計回りで読むハンコを「回文印(かいぶんいん)」と呼びます。
前回ご紹介した真砂幽泉(まなごゆうせん、1770-1835)の使用印は、そうした回文印のよい例です。
真砂幽泉使用印 「真幽泉印」(陰文回文方印) 斜印面 個人蔵(小) 真砂幽泉使用印 「真幽泉印」(陰文回文方印) 印面 個人蔵(小) 蓬莱山図 真砂幽泉筆 落款印「真幽泉印」(陰文回文方印) 個人蔵(小)
真砂幽泉使用印「真幽泉印」(陰文回文方印)個人蔵
また、以前ご紹介した阿部縑洲(あべけんしゅう、1793-1862)が作ったと思われる野呂介于(のろかいう、1777-1855)の使用印も回文印です。
野呂介于使用印「呂周輔氏」(陰文回文方印)・「呂隆忠印」(陰文回文方印) 個人蔵
野呂介于使用印「呂周輔氏」(陰文回文方印)・「呂隆忠印」(陰文回文方印) 個人蔵
野呂介于使用印「呂周輔氏」(陰文回文方印) 印面 個人蔵 野呂介于使用印「呂周輔氏」(陰文回文方印) 個人蔵 印影「呂周輔氏」(陰文回文方印)
野呂介于使用印「呂隆忠印」(陰文回文方印) 印面 個人蔵 野呂介于使用印「呂隆忠印」(陰文回文方印) 個人蔵 印影「呂隆忠印」(陰文回文方印)
回文印は、それほど数は多くありませんし、長文の印で回文印かどうかを判断するのはなかなか難しいといえますが、名前や雅号を示す落款印(らっかんいん)には、しばしば回文印が用いられますので、知っておくと便利です。
回文印を見分けるポイントは、ハンコの文章の文末がどこにきているかです。
落款印は、たいてい「○○之印」「○○○印」「○○之章」「○○○章」「○○○氏」などのような四文字で構成されることが多いので、「印」や「章」や「氏」のような文字が押されたハンコ(印影)の右下に来ていると、回文印の可能性が高いといえます。(ただし、「氏」は「○氏○○」のように読む場合もあるので、必ずしも回文印とは限りません。)
さて、今回も、また、難しかったですね。
けれども、ハンコを作った人、あるいはハンコを使う人の気持ちになって、きちんとハンコを読んであげることも重要です。また、同じ印文のハンコでも、回文印かどうかで、ハンコの文字の配置が異なります。つまり、ハンコに名前をつけたり、同じハンコかどうかを区別する際にも、回文印かどうかを把握しておくことは大切になるのです。
さて、次回の「ハンコの基礎知識」では、ハンコの名前をつける際にも必須となるハンコの形と呼び方についてご紹介しましょう。(学芸員 安永拓世)
企画展 ハンコって何?
和歌山県立博物館ウェブサイト

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