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コラム「箱の内側にも工夫あり」

今回の「箱と包みを開いてみれば―文化財の収納法―」のコラムでは、
「箱の内側にも工夫あり」について、ご紹介しましょう。
前回のコラムでご紹介した熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)の古神宝(こしんぽう)を収納していた「朱塗唐櫃(しゅぬりからびつ)」ですが、実は、熊野速玉大社の古神宝は、この唐櫃に直接入れられていたわけではありません。それぞれの古神宝が、さらにそれぞれの箱におさめられて、この唐櫃に収納されていたのです。つまり、古神宝は、結果的に外側の唐櫃も含めて、二重や三重の箱におさめられて伝わってきたことになります。
第1回 松喰鶴蒔絵御衣箱 全景 熊野速玉大社蔵(小)
(画像をクリックすると拡大します)
写真に挙げた「松喰鶴蒔絵御衣箱(まつくいづるまきえみぞばこ)」は、熊野速玉大社の神様にささげられた衣服を収納していた箱です。箱の外側には、黒い漆(うるし)の上に銀の粉をまいた銀蒔絵(ぎんまきえ)という技法で、鶴が松の枝を口にくわえた松喰鶴(まつくいづる)と呼ばれるおめでたい文様が描かれています。
一方、箱の内側には、緑色や黄色の糸で蓮の花の文様を織り出した赤色の裂(きれ)が貼(は)られています。
御衣箱 内貼(小)(画像をクリックすると拡大します)
内側の裂は、装飾を目的に貼られたものでもありましたが、それと同時に、中に入れる衣服を傷めないという目的もありました。こうした裂が、中に入れるものを守る、ちょっとしたクッションにもなったのです。
箱の外側だけではなく、箱の内側にも、このように、さまざまな工夫がこらされていました。(学芸員 安永拓世)
企画展 箱と包みを開いてみれば―文化財の収納法―
和歌山県立博物館ウェブサイト

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