わかやま絵本の会(松下千恵さん)が作った絵本に
「くまののかみさま」というのがあります。
実はこの絵本、和歌山県立博物館で所蔵する熊野権現縁起絵巻
という絵巻物を題材にした絵本なんです。
この絵巻物は、寛永14年(1737)に姉崎治右衛門家□という人が書いたものです。
江戸時代のはじめになると、このような熊野権現縁起絵巻がまとまって作られていたようです。
天竺(インド)のマカダ国の王様善財王と
1000人の后のうちの一人である五衰殿の女御との間に生まれた子(王子)が、
天竺を飛び立ち、熊野の神様になったという話です。
全部で上中下の3巻の巻物になっています。
(山の獣たちに育てられて成長する王子)
(本宮)
(新宮)
(那智)
このように熊野三山の境内が描かれているのも、非常に興味深いものがあります。
熊野那智参詣曼荼羅と比べてみるのも面白いでしょう。
和歌山県立博物館で所蔵する熊野権現縁起絵巻の特徴は、
万行法印という山伏が描かれていること、
そしてその人物が役行者になるという話が盛り込まれている点です。
(王子を肩車しているのが万行法印)
熊野に関わりのある山伏が、自らの由緒を語るために
この絵巻を作成し、所持していたのではないかと考えられます。
さて、この絵本の読み聞かせを、「みる?きく!むかしばなし」として、
8月12日(日)、8月19日(日)、9月2日(日)の、あと3回行います。
絵本の絵とストーリーを楽しんでいただいた後、
展示室で江戸時代の絵・絵巻物にも触れていただけると、
絵本の歴史の流れも味わっていただけるのではないかと思います。
絵本の絵と絵巻物の絵を見比べてみるのも面白いと思います。
なお、山の獣たちに守られて成長する王子の様子を描いた場面
をもとに缶バッジを作成しました。
そのほか別のデザインのバッジ(5種類)も準備しています。
会期中にご来館いただいた高校生以下のかたには、
無料でプレゼントしてますので、
是非この機会にお越しいただけたらと思います。
(学芸員 坂本亮太)