和歌山県立博物館マイミュージアムギャラリー
第47回展示 「「富士見西行」に魅せられて」
【出 陳 者】 中西 満義
【展示期間】 平成30年10月13日(土)~11月25日(日)
【出陳資料】 西行置物・皿・漆塗椀・刀装具・絵銭 江戸~大正時代(18~20世紀)
【資料をめぐる思い出】
「はじめて発表した論文が「西行の『風になびく』歌について-和歌伝統からの『超出』-」というタイトルでした。西行みずからが慈円に「わが第一の自嘆歌」と語ったとされる「風になびく富士の煙の空にきえて行方も知らぬわが思ひかな」という一首について、用語、措辞の考察をとおしてその意義を指摘しました。
以来、蝸牛の歩みのようではありますが、西行、およびその和歌について考え、駄文を草してきました。その間、西行和歌の到達点を示す「風になびく」歌を核としつつ、いくつかの要素を取り込んで展開した「富士見西行」についても関心を寄せてきました。文芸にとどまらず、絵画、造型にまで及ぶのが特長で、近世期から近代にかけての西行図像を注視していくと、もっとも多様な意匠で表現されたのが「富士見西行」であることが明らかになります。
「富士見西行」は、文学というジャンルを超えた文化史的な拡がりを有する「西行」を捉えるには恰好の題材と言えます。そして、この意匠は、絵画という平面的な作例だけでなく、大小さまざまな造形物として残されていることも見逃せません。
このたび、特別展「西行」にあわせて、マイミュージアムギャラリーの場を提供くださることになりました。和歌山県立博物館のご厚意に感謝するとともに、この展示をとおして多くの人々に愛されてきた西行の魅力の一端を感じ取っていただけるなら、これに過ぎたる喜びはありません。」
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※特別展図録『西行-紀州に生まれ、紀州をめぐる-』に所収される中西さん執筆のコラム「西行のかたち」もご参照下さい。