和歌山県立博物館では、2019年3月9日(土)~4月21日(日)の期間中、企画展「国宝・古神宝の世界―熊野速玉大社の名宝―」を開催します。
古の日本では、人知を超えた自然の力を神として畏れ敬ってきました。やがて神殿が用意され、神々が常にそこに住まうと考えられるようになると、その生活の道具として「神宝」を特別に作り、神殿に納めるようになりました。社殿や神宝が古くなると、神が新たな力を得てよみがえることができるように、社殿を建て替えたり、神宝を新しく作り直したりします。このとき新しい神宝とひきかえに神殿から下げられた古い神宝を「古神宝」と呼びます。
熊野三山の一つとして古来信仰を集める熊野速玉大社(和歌山県新宮市)には、南北朝時代・明徳元年(1390)に天皇や足利義満らによって奉納された、およそ1000点の古神宝が伝わります。当時の工芸技術を結集した熊野速玉大社の古神宝は、平安時代以来の宮廷文化をうかがわせるとともに、奉納者や制作者の、神々に対する強い畏敬の念を感じさせます。
神々に捧げられ、現在は国宝となっている古神宝類を通じて、古の人に思いをはせていただきたいと思います。