掃部太郎畠地売券(館蔵品622 紀州本・川中島合戦図屏風 下貼文書のうち)
和歌山県立博物館が所蔵する資料として、紀州本・川中島合戦図屏風があります。
この屏風では、武田信玄と上杉謙信とが一騎打ちする場面を描くものとして
よく知られており、図版などでもしばしば取り上げられています。
実は、この紀州本・川中島合戦図屏風を修理した際に、
大量の下貼文書が見つかりました。そのなかに、一点のみですが中世文書が見つかっています。
紀州本・川中島合戦図屏風の下貼文書についてはこちら↓を参照ください。
スポット展示 紀州本・川中島合戦図屏風のウラ
【釈文】
永代売渡下地事
合畠三段地之内半下地者〈梶取茶屋前/東西ハ地類/南道限、北畔限〉
右下地者、直銭伍貫参百文売渡事実正也、
公事銭五十文、此外号諸公事旨、天下一同
徳政行候共、不可有違乱、証文如件、
天文廿年五月吉日 売主掃部太郎(花押)
左教大夫殿渡申候 口入レンケ谷重徳院(略押) 与三大夫(略押) 庄官大夫(略押)
ノサキ助郎大夫(略押)
天文20年(1551)掃部太郎が畠三段を5貫300文で左教(左京ヵ)大夫に売り渡した証文です。
梶取茶屋前とあり、和歌山市梶取に茶屋があったことがわかります。
また、口入(仲介)として「レンケ谷」(蓮花谷)重徳院が関わっていることが注目されます。
蓮花谷という谷名から判断すると、根来寺僧の可能性が考えられます。
坂本亮太「地域のなかの根来寺」
(『連続講座報告集 今、明らかになる 泉州・紀北の戦国時代』泉佐野の歴史と今を知る会、2018年)
で取り上げて、紹介しました。
(当館学芸員 坂本亮太)