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コラム 印章(桑山玉洲ほか所用)

今回は、ハンコです。
0804桑山玉洲・桑山家使用印 個人蔵
印章 桑山玉洲ほか所用(いんしょう くわやまぎょくしゅうほかしょよう)23顆・一合
石製・水晶製
江戸時代(18~19世紀)
個人蔵
 日本や中国の画家たちは、絵の仕上げに、サインを書いて、印を捺します。これは、桑山玉洲とその妻の君婉(くんえん)や子の㬢亭(ぎてい)が使った印で、花鳥をデザインした愛らしい漆塗の箱に収められています。
 
 日本や中国の画家たちは、絵の仕上げに、サインを書いて、ハンコを捺します。画家の名前や好きな言葉を彫った、世界でただ一つのハンコをおすことによって、たとえサインがなかったとしても、その画家が描いたとわかるのです。墨一色の絵に、小さいけれど、鮮やかな朱色のハンコがおされると、画面がひきしまります。
 また、昔の画家は、いくつも雅号(ペンネーム)があったので、ハンコもたくさん持っていました。文字の部分がへこんで白く見えるように彫ったものを「白文印」、文字の部分が赤く浮きあがるように、周りを彫ったものを「朱文印」と呼びます。赤と白のバランスや、ハンコを捺す位置で、絵の雰囲気が大きく変わるので、ハンコを捺すのは、緊張する一瞬だったのではないでしょうか。
展覧会では、次の作品を展示し、玉洲がハンコを捺す際の工夫(バランスの取り方)をご覧いただきました。
山水図 桑山玉洲筆 個人蔵
(山水図 桑山玉洲筆 個人蔵)
細長い紙に、山や滝、川(山水)を描いています。右上にサインをして、その下に「嗣」「粲」の朱文印を捺しています。「嗣粲」(しさん)は、玉洲のペンネームの一つです。左下には、「聴雨」(ちょうう)という、玉洲のアトリエの名前を彫ったハンコを捺しています。こちらは白文印です。
上には赤の分量が少なくて軽い朱文印、下には赤の分量が多くて重い白文印を配置して、絵の持つ上昇感をサポートしています。
そして、こうした小さく細長い絵には、大きなハンコではなく、細くて小さ目のハンコを用いることで、すっきりとした印象を保っているのですね。
さて、上で紹介したハンコ類の中には、この絵に捺したハンコもあります。
「嗣粲」「聴雨」印
このハンコは、表に「嗣」「粲」、裏(展示室では鏡に映してご覧いただきました)に「聴雨」と彫ってあります。
この組み合わせは、「山水図」に捺してあるのと同じです!
「山水図」の二つのハンコは、別々のものではなく、一組として作ってあったハンコだったのですね。
こんなことがわかるのも、作品と道具が一緒に遺っていることの面白さの一つです。
(学芸員 袴田)

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