大村家長屋門の屋根は入母屋造の本瓦葺で、平瓦と丸瓦を組み合わせて葺かれています。
旧大村家住宅長屋門の本瓦葺の屋根
軒先や鬼瓦には、大村家家紋の桔梗が造り出されています。
桔梗紋軒丸瓦 和歌山市蔵 〔展示番号48〕
軒丸瓦や鬼瓦には、「泉州深日 源四郎」の刻印や、へら書きが見られ、
現在の大阪府泉南郡岬町深日の瓦屋で製作されたことが分かります。
当地は江戸時代から明治時代にかけての瓦の一大生産地で、
「谷川瓦」のブランドで大阪、和歌山のみならず、各地に販路を伸ばしていました。
長屋門には屋根だけでなく、海鼠壁にも瓦が使われています。
海鼠壁は平瓦を壁の胴縁に釘打ちし、目地に漆喰を半円型に盛って造られています。
海鼠壁
漆喰の形が、海に棲む海鼠に似ているのが、名称の由来とされています。
外壁の防火、防水に役立ちますが、造るのには大変手間のかかる構法です。
海鼠壁の瓦には刻印などがなく、産地は不明ですが、屋根瓦と同じ谷川瓦と見られます。
つづく
次回のミュージアムトークは7月15日(土)です。
ミュージアムトーク終了後、現地見学会(旧大村家住宅長屋門)を行います。
(文化遺産課 主査 御船達雄)
→企画展「紀伊徳川家の家臣たちⅡ」