天下一友閑焼印を持つ能面・小尉(こじょう)
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和歌祭の面掛行列で使用されてきた古い仮面97面には、本来の用途を離れ転用された能・狂言面が53面含まれている。このうち江戸時代製作の能面に限ると31面で、中には「天下一友閑」という焼印がおされたものが7面含まれている。
天下一友閑とは、江戸時代前期の仮面製作者、出目満庸(でめみつやす・??1652)のこと。天下一は優れた職人に許された称号で、そういった名人の作った面は、能が武家の式楽(正式な場で行う歌舞音曲)であった江戸時代においては入手が大変難しかった。例えば紀伊徳川家八代藩主重倫収集の能面が現在岩出市の根来寺に残されているが、能面158面中、友閑の面は6面である。31面中7面の比率は、突出した数字といえる。
これだけの水準の仮面を集めることができたのは、和歌祭を創始し、自身も能の名人であった徳川頼宣をおいて考えられない。面掛の仮面は、頼宣と能の深いつながりを示す資料として、今後注目されるだろう。(学芸員大河内智之)
→企画展「奇跡の仮面、大集合!―紀州東照宮・和歌祭の面掛行列―」
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→和歌山県立博物館ウェブサイト