和歌山県立博物館友の会マイミュージアムギャラリー
第17回展示 「フィールドノートは中世の風をのせて」
【出 陳 者】 高木 徳郎
【展示期間】 平成22年2月27日(土)?4月16日(金)
【出陳資料】 野帳(やちょう) 平成6年(1994)
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【資料をめぐる思い出】
「卒業論文で粉河町(現紀の川市)内の荘園を取り上げた私は、大学院に進学後、本格的に研究を進めるため、この野帳を持って粉河町内での聞き取り調査を行いました。
ある人と話をしていると、中世の言葉と思っていた、地域内の集団を示す「垣内(かいと)」という言葉が現在でも日常用語で使われており驚きました。また池を管理する人を「カンロ」というと聞いたので、後に調べてみるとやはり中世の史料の中に同じ役割の人を「勧頭(かんとう)」と呼んでいることが分かりました。中世世界が今に生きていることを実感し、調査の楽しさに気づいた、私の原点の一日です。」
【学芸員の一口メモ】
野帳(やちょう)とは、野外での調査の際に使用する、縦長で硬い表紙のついたフィールドノートです。土木や林業などの業務で測量・測定した数値などを書き込む統計表型や、地図や見取り図などを書き込む方眼型などがあります。歴史学の分野でも現地調査の際には、丈夫でコンパクトなその形態から、利用する人が多いようです。
和歌山県には中世(平安時代後期?戦国時代)に成立した数多くの荘園が分布しています。それら荘園の研究は、古文書による分析だけではなく、現地に残された中世の痕跡を丹念に拾い上げていく手法によって、中世社会の実像を再構築するさまざまな手掛かりをもたらしています。日本の荘園研究の歴史において、和歌山県の荘園研究の大きな蓄積は燦然(さんぜん)と輝いているのです。
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