特別展「聖地巡礼―熊野と高野―」第Ⅲ期「人・道・祈り―紀伊路・伊勢路・大辺路をゆく―」も折り返しを迎えました。一部の作品につきまして、展示替えを行いました。特に大辺路のコーナーは一新しています。
桑山玉洲筆の橋柱巌図屛風は、那智瀧図に変わっています。
長沢蘆雪筆の群猿図屛風は左隻から右隻へと変わりました。水辺で水を飲み、毛繕いをする和やかな猿を描いたものです。前期には蘆雪作品のうち虎図・唐獅子図を展示していましたが、後期の展示では、草堂寺の牛図、成就寺の山水図・群雀図、高山寺の柳に烏図を展示しています。
蘆雪の描く猿・牛・烏・雀といったかわいらしい鳥や動物たちもみどころではありますが、熊野古道との関連で言えば、特に山水図にも注目していただきたいと思います。蘆雪が紀南の雄大な熊野の自然に触発されて描いたものかも、そんな思いを起こさせてくれる作品です。
そのほか、聖護院所蔵の熊野宮曼荼羅、檀王法林寺所蔵の熊野権現影向図、熊野速玉大社所蔵の熊野那智参詣曼荼羅など、熊野信仰を代表する絵画類も後期から新たに展示したものもあります。また、道成寺縁起は下巻に変わりました。道成寺縁起のなかでも最も有名な場面といってもいい部分を紹介しています。真砂庄司の娘が鐘に隠れた「見目能僧」を見つけ、鐘に巻き付き火を吐く、というクライマックスを是非ご確認ください。
さらに、興国寺所蔵の法燈国師像も展示替えをいたしました。由良興国寺(和歌山県由良町)の開山法燈国師(無本(心地)覚心)の大きな肖像画です。画面の上部には、一山一寧の賛が記されています。また、この肖像画の意外なほどの大きさに注目していただけたらと思います。実物でみる迫力はすごいものがあります。この法燈国師像は、毎年10月13日の開山忌法要で掛けて行事が営まれるのですが、その行事が終わったので、お借りして展示することが叶いました。
後期のみに展示されるものも、みどころがたくさんあります。前期にご覧になったかたも、是非、あらためて展示を見ていただけたらと思います。