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弁顕密二教論・般若心経秘鍵・吽字義・即身成仏義(高野版)(館蔵品253)

弁顕密二教論・般若心経秘鍵・吽字義・即身成仏義(高野版)(館蔵品253)
弁顕密二経論(表紙) (弁顕密二教論 表紙)  弁顕密二経論(巻首) (弁顕密二教論 巻首)
般若心経秘鍵(巻末) (般若心経秘鍵 巻末刊記) 吽字義(巻首) (吽字義 巻首)
 ※画像はいずれもクリックで拡大します。
【刊記等】
(般若心経秘鍵・刊記)「右筆甲州暁善」
【内容】
「般若心経秘鍵」1巻、「即身成仏義」1巻、「吽字義」1巻、「弁顕密二教論」2巻、
「声字実相義」1巻、「秘蔵宝鑰」3巻、「菩提心論」1巻、
弘法大師等の著作10巻をあわせたものを「十巻章」と呼びます(「菩提心論」のみ弘法大師の著作ではありません)。
江戸時代中期頃より、弘法大師の代表的な著作、弘法大師の重要な教えが説かれている著作を合わせて「十巻章」とし、
現在でも高野山大学では素読や講義などに使われているようです
(北川真寛『はじめての「弘法大師信仰・高野山信仰」入門』セルバ出版、2018年)
この資料はそのうち、「般若心経秘鍵」「即身成仏義」「吽字義」「弁顕密二教論」の高野版(5冊)です。
いずれも粘葉装で、江戸時代に印刷されたものと思われます。
高野版とは、広い意味では高野山内で版が彫られ、出版された書物(仏書)全般を指しますが、
なかでも鎌倉時代~江戸時代の前半頃までは形態がよく似ているため、
狭い意味ではこれらのみを高野版とも呼んでいます。
似た形態とは、
①料紙に高野紙を用いていること、
②字体に写経体(仏典を写すために使われた書体)を用いていること、
③装丁は多くが粘葉装であること(そのほか巻子・折本などもあります)、といった点が挙げられます。
このうち般若心経秘鍵には刊記に「右筆甲州暁善」とあります。
京都大学附属図書館所蔵の永禄7年(1564)刊の高野版・般若心経秘鍵(1-24/ハ/1貴)に
「為奉報高祖鴻恩謹開此秘鍵印板者也/永禄七年<甲子>八月日 施主生国泉州栄泉/右筆甲州暁□(破損)」とあり、
本資料は永禄7年刊本の後印本と考えられます。
また「弁顕密二教論」には表紙に「雲長」とあり、詳細は不明ですが雲長の蔵書であったこともわかります。
なお、高野版については、
・『空海からのおくりもの 高野山の書庫の扉をひらく』凸版印刷株式会社 印刷博物館、2011年
・『歴史資料 高野版板木調査報告書』高野町教育委員会、1998年
などをご参照ください。
(当館学芸員 坂本亮太)

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