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特集展示「仮面に隠された文字発見!」

特集展示
仮面に隠された文字発見!
―和歌祭仮面群調査成果速報―


 今年春、新たに和歌山県指定文化財となった紀州東照宮所蔵の和歌祭仮面群は、春の例大祭・和歌祭の面掛行列で用いられてきた96面からなり、多くが現在も使用されています。これらの仮面の文化財指定にあたっては、和歌山県立博物館が平成17年より継続して行ってきた調査の成果が高く評価されています。
 その調査の中でも、平成18年?20年には、和歌山県教育委員会による文化財指定ランクアップ推進事業の一環として一部仮面の修理を行い、新たな銘文を確認するなど、大きな成果をあげることができました。今回の展示では、その修理を行った仮面9面を展示し、事業の成果をお知らせ致します。なお、7月25日(土)?8月30日(日)の会期で、夏休み子ども向け企画展「江戸時代のくらし」も開催しています。


【展覧会名】 特集展示 仮面に隠された文字発見!―和歌祭仮面群調査成果速報―
【会  期】 平成21年(2009)7月23日(木)?8月30日(日)
【休 館 日】 毎週月曜日
【会  場】 和歌山県立博物館 常設展示室(近世コーナー) (和歌山市吹上1-4-14)
【開館時間】 午前9時30分?午後5時(入館は午後4時30分まで)
【入 館 料】 一般280円(220円) 大学生170円(140円)
※( )内は20名以上の団体料金
※高校生以下、65歳以上、障害者の方、および県内に在学中の外国人留学生(外国人就学生を含む)は無料


【出陳資料】
・賢徳 方広作      室町時代     (平成20年度修理) 紀州東照宮
・男面           室町?桃山時代 (平成20年度修理) 紀州東照宮
・女面 天下一友閑作 江戸時代      (平成20年度修理) 紀州東照宮
・男面           鎌倉?南北朝時代(平成19年度修理) 紀州東照宮
・男面           室町時代     (平成19年度修理) 紀州東照宮
・祖父           桃山?江戸時代 (平成19年度修理) 紀州東照宮
・笑尉 方広作      室町時代     (平成18年度修理) 紀州東照宮
・小尉 天下一友閑作 江戸時代     (平成18年度修理) 紀州東照宮
・男面           室町時代     (平成18年度修理) 紀州東照宮
・和歌祭面掛図 笹川遊原筆 江戸時代              和歌山県立博物館蔵


【平成20年度の修理成果】
賢徳修理前 賢徳修理前面裏(修理前)
賢徳修理後 賢徳修理後面裏(修理後)
↑「賢徳」という名前の仮面です。修理前(上段)は落として割れた面を接着剤と布テープで止めていました。またペンキのような塗料も塗られていました。修理後(下段)、布テープの下から、「方廣作」の朱漆銘が現れました。方廣という人物については詳細は不明なのですが、東照宮には同じ「方廣作」銘を持つ仮面がこれまでに6面見つかっています。全て室町時代の仮面で、この仮面も室町時代のものと考えられます。 
女面修理前 女面修理後
↑女面です。修理前(左)は、墨書きがされて滑稽な風貌であり男面と思われましたが、修理後(右)は笑みを浮かべた若い女性の仮面であることがわかりました。面裏に「天下一友閑」の焼印があり、江戸時代初期の名人出目満庸(でめみつやす)の仮面です。
男面修理前 男面修理後
↑男面です。この仮面は、修理前(左)は女面と思われたのですが、修理後(右)は頭頂部が水平に近いかたちになっているので、本来は冠をかぶった男面であることが判明しました。彩色を除去すると、その表情もよくわかるようになりました。面裏の鼻部分に10本の縦筋が刻まれ、室町時代末期に活躍した出目満照による作の可能性があります。(学芸員 大河内 智之)

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