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移動する仏像展日誌4(3月12日)

□■梱包と輸送■□
 和歌山県立博物館では、平成22年4月24日(土)?6月6日(日)の会期で、特別展「移動する仏像―有田川町の重要文化財を中心に―」を開催します。この日誌では、その途中経過をお知らせしながら、博物館の業務についてご紹介しています。
 3月12日(金)。本日も資料の集荷のため有田川町へ。歓喜寺・浄教寺で仏像を梱包し、無事に輸送しました。
20100312集荷
 仏像の梱包方法に、これが唯一の正解!というものはないのですが、現在スタンダードなのは、坐像の場合は画像のような「L型」と通称する木製フレームに座ってもらい、背中にクッションをあてて、胸部や膝などをさらしや玉紐でフレームに固定するものです。頭部や手先など出っ張った部分には薄様(うすよう)という和紙を、くしゃくしゃと丸めてクッションにしたり、細く裂いて撚りをかけて紐にしたり、包んだりして露出部を覆います。この作業、「養生」といっています。いい言葉ですね。さらにこのL型ごと入るケースを造る場合もよくあります。
 立像の場合は、同様に養生をした上「担架」と通称している担架状の木製フレームに寝かせ、胸部や足部などでさらしなどを用いて担架にくくります。どちらの場合でも重要なのは、今お伝えしたようなやり方が基本形ではあるけれども、仏像それぞれの持つ個性は千差万別なので、臨機応変に変えないといけないということです。この個性、単に腕の付き方や体型の問題ではありません。例えば構造的に弱い部分や、表面の仕上げ(彩色や漆箔)が弱っている部分などをさらしで締めれば、どのような事態になるかは明らかです。時として、オーソドックスな方法を捨てて、一品ものの特殊な梱包をすることもありえるのです。
 博物館・美術館の現場では行われませんが、全身をさらしでぐるぐるとまいてフレームに固定する方法も伝統的にあります。仏像修理の現場では、そういう方法がとられています。
 仏像の梱包を学芸員が一人で行うのには無理がありますので、状況に応じて、上記のような文化財梱包を行うことのできる、専門の輸送業者さんの協力を仰ぎます。それでも、文化財の声なき声をしっかり聞いて、いかに安全に梱包するかに精神をとぎすませるのが、学芸員の責任です。作業員さん一人一人の力量を把握し、その力と技術、経験、理論を借りながら現場の統一感を醸成し、シンプルでベストな梱包方法を選択して無事であることを確保すること。地味ですが、けっしておろそかにできない大事な業務です。(学芸員 大河内智之)
 
→移動する仏像展日誌バックナンバー
→和歌山県立博物館ウェブサイト

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