和歌山県立博物館友の会マイミュージアムギャラリー
第33回展示 「寄り合いの輪と和-火鉢とともに-」
【出 陳 者】 白井陽子
【展示期間】 平成24年12月22日(土)~平成25年3月15日(金)
【出陳資料】 黒漆塗沈金鶴文火鉢 近代(20世紀)
【資料をめぐる思い出】
「住む人のいなくなった実家を片付けていて、陶器製の湯たんぽと一緒に、この火鉢を見つけました。
昭和30年代、池の水の配分や用水路の管理をはじめ、村内での取り決めを話し合うための常会が、年に何度か当番の人の家で開かれました。
常会が我が家で開かれたのは、冬のことでした。20数軒の村でしたが、その日、母は、朝から掃除と座布団干し等に忙しく、子どもの私も、今夜、常会が私の家で開かれることを伝えに、家々を回ったことを覚えています。
火鉢は複数用意されました。夜になると、野良仕事を終えた村の人たちがそれぞれの家から集まって来ます。かいろ灰に火をつけて懐を温めた頃のことで、火鉢は暖をとるのに欠かせません。
話し合いは、火鉢を囲んで日付けが替わる頃まで行われました。常会の最中は、私と弟は隣の部屋で静かにしていました。煙草の煙が欄間を抜けて部屋中に広がり、そのにおいは翌日も残っていました。
毎年12月には、のっぺい汁などを囲んで、入会山の税金を分担し合うカンジョウ講が開かれた時も、火鉢は活躍しました。
先人たちが寄り合いで積み上げてきた村内のルールは定着し、今では、設備の整った自治会館で、毎年一回寄り合いが開かれているようです。」
【学芸員の一口メモ】
火鉢は、灰を入れ、その中におこした炭火を入れて、手を暖めたり、湯を沸かしたりするのに用いる道具です。
素材は、木製・金属製・陶製・瓦製・土製・石製など多種多様です。形も丸い物が一般的ですが、四角い長火鉢などもあります。
豪華なものでは、総体を漆塗りとして、蒔絵などで装飾するものがあります。展示している鶴文火鉢は、扇文火鉢とセットになっており、どちらもおめでたい図柄であるので、主に正月などの慶事に使用したものかもしれません。
なお、博物館の常設展示室内、中世2のコーナーでは、根来寺遺跡から出土した、戦国時代の瓦製火鉢と鉄火箸を展示しています。あわせてご覧下さい。
瓦製火鉢・鉄火箸(根来寺遺跡出土) 戦国時代