梵字悉曇字母并釈義(高野版) (館蔵品373-1)
【掲載資料】
・『きのくにの歴史と文化―和歌山県立博物館館蔵品選集―』(和歌山県立博物館、2004年)に掲載。
(表紙) (巻首)
(奥書1) (奥書2)
※いずれも画像はクリックで拡大します。
【奥書等】
(外題)「字母釈義」「御作」
(原外題)「字母釈義大師御作」「貧道沙門」
(表紙墨書)「快澄和尚/此一帖師主遣附之可貴々々、重伝」
(内題)「梵字悉曇字母幷釈義」
(尾題)「悉曇章一巻」
(刊記)「正平七年〈壬辰〉二月廿五日、於金剛峯寺、寛覚書/願主法眼重祐」
(校合奥書)「嘉慶二〈戊辰〉八月六日、於高野本誓院律窓、以大楽院点本、点之校畢/正和五年五月廿八日、於大覚寺殿仏母心印、以御本〈二牒/半紙草紙〉/書写之既訖、彼御本者、以御筆本〈巻物〉被仰宗英/被書写之云々、梵字者宸筆也、一字一点不違/本者也、雖為二伝之本、尤可秘蔵者歟、此書/世流布之本訛謬甚多、恐可為証本者乎/金剛仏子融清」
(朱書)「以右本令校合幷奥書写畢、近来以此/書本高野印版開者也」
(別筆)「未鈔口筆一巻/東寺/賢宝/写本/霊瑞法師 功徳聚院/発軫二巻印行高野山本」
【内容】
弘法大師が著した悉曇(梵字)の解説書で、弘仁5年(814)年に嵯峨天皇に献上したものです。
本来梵字は表音文字であるため、意味はないのですが、
大乗仏教では一字一字に教理的な意味を持たせており、それについて解説を加えています。
本書は、正平7年(1352)刊の版本(開版願主は重祐、版下筆者は寛覚による高野版)を、
嘉慶2年(1388)に某人が高野山大楽院の「正和五年融清書写本」を以て校合したものです。
そのほか正平年間の高野版(正平版)として「法華経釈」「理趣経開題」「悉曇字記」が知られています。
なお、高野版とは、広い意味では高野山内で版が彫られ、出版された書物(仏書)全般を指しますが、
なかでも鎌倉時代~江戸時代の前半頃までは形態がよく似ているため、
狭い意味ではこれらのみを高野版とも呼んでいます。
この資料も粘葉装となっています。界線はありません。
「金剛峯寺諸院家析負輯」の功徳聚院の項には、
大空房霊瑞(文政10年(1827)没)が取り上げられ、「字母釈発軫」を著したことが記されています。
本資料の奥書とも関わる内容となっています。
(当館学芸員 坂本亮太)