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スポット展示「新春を祝う―南紀男山焼の優品、染付松竹梅図大徳利―」(令和2年12月25日~令和3年1月24日)

スポット展示
「新春を祝う―南紀男山焼の優品、染付松竹梅図大徳利―」
会期:令和2年(2020) 12月25日(金)~令和3年1月24日()
会場:和歌山県立博物館 2階学習室スポット展示コーナー
まもなく令和3年。
館蔵品の中から、新しい年を迎えるのにふさわしい作品をご紹介いたします。
「南紀男山焼 染付松竹梅図大徳利」(なんきおとこやまやき そめつけしょうちくばいずおおとくり) 1口 
                                     江戸時代(19世紀) 和歌山県立博物館蔵
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※画像はクリックすると、拡大します。
 高さ40㎝をこえる大きな徳利は、現在の日常生活ではほとんど目にすることはありません。
このような大きな徳利は、酒や醤油などの液体を保存するために用いられたといいます。
しかし、本作は見事な球体状の胴部をもつ造形や、良質の顔料を用いて描かれた精巧な絵付けから実用の品ではなく、
鑑賞を目的とした調度品としてつくられたと考えられます。
 球体状の胴部分に、見事な枝振りの松と梅を対角線上に配し、腰から下には拡大した竹の葉と枝が染付で描かれています。
よく見ると松は、和歌山城下の南に位置する高松の風致として名高い、
根が地上高くに露出した所謂「根上り松」風に表現されています。
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※画像はクリックすると、拡大します。
 古来、中国では松竹梅の組み合わせは「歳寒三友」(さいかんさんゆう)と呼ばれ、
寒さの厳しい冬であっても美しい色を保つ松や竹、美しい花をつける梅を変わらぬ友情に喩えたり、
困難にあっても屈しない清雅な姿を讃えるなど、文人たちに詩画の題材として好まれました。
 次第に今日知られているように縁起物として捉えられるようになり、
器面いっぱいに枝を広げる梅と松に竹の葉をあしらう本作は、いかにもめでたい印象を与えます。
底面には、文政10年(1827)に有田郡広村(現在の有田郡広川町)の
男山南斜面に開かれた男山陶器場で製作されたことを示す「南紀男山」の銘に加え、
水引や紐細工を思わせる模様が描かれています。
これは仏教の思想に由来する吉祥紋様を組み合わせた八喜祥(八宝)の第八品にかぞえられる
盤長(ばんちょう)をあらわしたもので、連綿不断や長久不断を象徴する意匠として
中国では工芸や建築、調度など様々なものに用いられています。
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南紀男山焼では、底面に盤長を描く作例は他に東京国立博物館所蔵のものをはじめ、
本作と同工の作品のみに確認されており、
特定の商品のロゴマークのようにつかわれている点が興味深いといえましょう。
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※画像はクリックすると、拡大します。
上の3枚の写真は、すべて「染付松竹梅図大徳利」です。
鑑賞する角度をかえることで、大ぶりな図柄の見え方が次々とかわるところもこの作品の魅力です。
写真撮影も可能ですので、ぜひ実物をご覧になってお気に入りの角度を探してみてくださいね。
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開催中の企画展「屛風の美-収蔵品の名品から-」(~1月24日)と共にぜひお楽しみくださいませ。
(学芸員 新井美那)
 

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