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和歌祭面掛行列の中世仮面 -面打「方廣」の仮面群-

令和4年(2022) 3月12日(土)~4月17日(日)

和歌祭面掛行列の中世仮面 -面打「方廣」の仮面群- 和歌祭仮面群 面掛行列所用品

 本年は紀州東照宮の例大祭・和歌祭が創始されて400年目の節目の年です。和歌祭では、神事のクライマックスである神輿渡御の際に、さまざまな芸能を行う行列が連なります。その中に、仮面をつけて仮装しにぎやかに練り歩く面掛(通称「百面」)という行列があります。

 面掛で使用されてきた仮面は、神事面や能面、狂言面、神楽面など鎌倉時代~近代にいたる仮面97面分が残り(さらに破損した部材の一部1面分を別に確認)、一括して和歌山県指定文化財となっています。現在の祭礼ではNPO和歌浦万葉薪能の会と能面文化協会が協力して制作・奉納した新しい仮面も使用されています。

 このスポット展示では、この面掛行列の仮面のうち、面裏の銘記から、面打(めんうち・仮面の制作者)の「方廣」(かたひろ/ほうこう)が作ったと判明する中世の仮面を紹介します。開催中の企画展「和歌祭と和歌の浦」(会期:3月12日~4月17日)で展示している「方廣作」銘を有する祖父(おおじ)を含め、全部で7面の方廣の仮面を一望していただけます。

 方廣という面打がいかなる人物であったのか、現在のところ不明ですが、これらの仮面はどれも大ぶりで造形の自由さに優れ、中世仮面の要素を濃厚に伝えるとともに、能面・狂言面の古態を示すところもあり、仮面研究上に重要な情報を提供します。知られざる室町時代の面打が手掛けた魅力溢れる仮面の「諸相」を、ぜひご堪能下さい。

出陳資料一覧

展覧会情報

会場 和歌山県立博物館2階学習室スポット展示コーナー
会期 令和4年(2022) 3月12日(土)~4月17日(日)
開館時間 午前9時30分~午後5時
観覧料 無料(ただし、常設展示室・企画展示室へ入室される場合は入館料が必要)
和歌祭面掛行列と仮面群について

 和歌山市の西南に位置する風光明媚な景勝地・和歌浦に、徳川家康をまつった紀州東照宮があります。家康の子頼宣(よりのぶ)が、駿河国から紀伊国に領地替えとなって入国したのち、元和7年(1620)に東照宮を創建、翌年の春、家康の忌日である4月17日に初めての例祭が執り行われました。この例祭を和歌祭とよんでいます。

 和歌祭の大きな特徴は、神輿のあとに様々な種類の行列が連なることで、大変にぎやかな様相を示します。その行列の一つが面掛で、その名称の通り仮面を付け、華美な装束を身につけ、杖や扇を手にし、頭巾をかぶって練り歩きます。現在ではさらに傘を持って高下駄をはき、手に鳴り物を持ったり、子供を驚かせるなどの芸態も示します。

 現在この面掛で使用されてきた仮面として東照宮には、中世から近代にかけて作られた仮面97面が残されており(さらに破損した仮面部品を一面分確認)、すべて和歌山県指定文化財に指定されています。その構成は多様で、神事で使用されたと思われる仮面や能面、狂言面、神楽面、鼻高面が混在しています。仮面の大半には面裏に「東照宮什物」の焼印と、朱字や白字で番号が記されていて近代に幾度かの整理が行われたようです。現存する仮面に記された最も大きな整理番号は「第百拾六号」ですので、かつては今以上に仮面があったことがわかります。

 これらの仮面は一度に用意されたものではありません。元和8年の祭礼では38人の集団で、その後39人の構成を示す場合と(『紀伊国名所図会』ほか)、79人の構成を示す場合があり(『紀伊続風土記』)、面掛の構成人数には増減がありました。

 東照宮祭礼である和歌祭の内容には藩主の意向が強く反映されましたので、最初に使用された仮面の手配にも、藩主頼宣や藩が主体的に関わっていたと想定されます。中でも今回展示している、面裏に「方廣作」と朱字で記された仮面7面(1面は企画展で展示中)は、全て室町時代に作られた古面で、おそらく江戸時代初期に集められたものではないかとみられます。また面裏に江戸時代初期に活躍した有力な面内(仮面制作者)である「天下一友閑)」(出目満庸)の焼印があるものが7面あり、こういった名工の仮面は当時でも入手が難しいもので、このことも藩主の関与があったことを示唆しているといえるでしょう。

平成17年祭礼時の面掛行列

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