
令和4年(2022)12月3日(土) ~ 令和5年(2023)1月22日(日)
仏教の伝来、それは日本古来の「カミ」の信仰をもっていた人々にとって、新しい文化の流入でした。目に見えぬ「カミ」への崇拝と、「ホトケ」の姿を表現する仏教は、不思議と交ざり合い、豊かな信仰の世界を繰り広げていきます。
都からほど近くにありながら深い自然にとざされた、きのくに―和歌山県には、高野山や熊野三山をはじめ、各地に霊場が存在します。このたびの企画展では、県立博物館の所蔵品をはじめ、きのくにの信仰にまつわる資料を展示し、霊地で育まれた神仏習合の様相をたどります。
【展示構成】Ⅰ カミとホトケの坐(いま)すところ/Ⅱ カミとホトケが出逢う~仏教伝来~/
Ⅲ カミとホトケを表す~神仏習合と本地垂迹~/Ⅳ 霊地がつなぐカミ・ホトケ
[展示資料:36件56点 うち重要文化財4件、県指定文化財4件]
みどころ

①菩薩坐像(ぼさつざぞう)
かつらぎ町滝の極楽寺本尊・如意輪観音坐像(にょいりんかんのんざぞう)(江戸時代)の中に納められていた仏像です。銅造ですが、脚まわりの鋳肌(いはだ)が荒れており、かつて火災にあったことがうかがわれます。組んだ足を片膝にのせ、指を頬に当てるのは思惟(しゆい)の姿。細くしなやかな身体は朝鮮半島・三国時代の作例に見られるもので、仏教とともに伝来した請来像(しょうらいぞう)をもとに、日本で造像されたと考えられます。県内最古級の仏像として、重要文化財に指定されています。

②獅子(しし)・狛犬(こまいぬ)
神社や寺院の境内を守る獅子・狛犬。クスノキの一木から丸々彫り出した一木造で、両像とも大きく口を開け、頭を高く上げて遠吠えをしているようです。たてがみや首の角度など、左右を同じデザインにしているのも重要な特徴です。奈良・東大寺の南大門で導入された中国(宋)風の石製獅子にはじまる奈良様(ならよう)に影響を受けている可能性があります。初公開。

③千手観音立像部材(せんじゅかんのんりゅうぞうぶざい)
道成寺の本堂に安置されている千手観音立像(重要文化財)の一部であった部材を公開。奈良時代に造られた仏像の指先を、じっくりとご覧いただけます。千手観音像本体の根幹部分には、大きなウロのあるクスノキを使っており、古代日本人の木への心性をものがたる作例。仕上げには木のくずを混ぜた漆を用い、やわらかな造形が見どころです。

④如意輪観音像(にょいりんかんのんぞう)
色とりどりの刺繍で表現された如意輪観音像。仏教の尊像である如意輪観音の上には大きく「熊野山」と書かれ、神仏習合の様相をよく示しています。台座の下には作者と制作年が記され、制作の背景が知られる点も貴重です。熊野信仰の中でもとりわけ如意輪観音と関わりが深い那智山に奉納されたものであると推測されます。今回の展覧会では、同じ作者による那智勝浦町・大泰寺(だいたいじ)所蔵の「熊野三所権現本地仏像(くまのさんしょごんげんほんじぶつぞう)」〔展示番号30〕とともにご紹介。精緻な刺繍で豊かな表情を描き出しています。
展覧会情報
会場 | 和歌山県立博物館 1階 企画展示室 |
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会期 | 令和4年(2022)12月3日(土) ~ 令和5年(2023)1月22日(日) |
開館時間 | 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
休館日 | 月曜日(ただし、1月9日(月・祝)は開館、10日(火)は休館) 年末年始(12月29日(木)~1月3日(火)) |
観覧料 | 一般280円(230円) 大学生170円(140円) ※( )内は20人以上の団体料金。 ※高校生以下・65歳以上・障害者手帳をお持ちの方(同伴者を含む)は無料。 ※和歌山県内に在学中の外国人留学生は無料。 ※毎月第1日曜日は無料(会期中では12月4日(日)・1月8日(日)) |
主催 | 和歌山県立博物館 |
関連事業
ミュージアムトーク(学芸員による展示解説)
日時 12月4日(日)・12月24日(土)・1月8日(日)・1月14日(土)・1月22日(日)
いずれも13:30〜14:30
※当日、当館受付にてお申し込み下さい。
※新型コロナウイルス感染症流行の状況により、中止となる場合があります。
