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コラム「古文書が語る紀州の歴史」?

僧湛慶山地譲状
 これは、現在の海南市北部にあたる三上荘の山林を開発した湛慶上人が、開発した山林を舎弟の宗顕に譲り渡した時の証文です。はじめ、「深山」を切り開いて願成寺を建立し、その周辺の山地を開発していったことなどが記され、地域開発の端緒を考える上で重要な史料です。なお、この史料は願成寺文書として、和歌山県指定文化財に指定されています。
 平安時代後期は、全国的に未開の山野や荒地が開発されたり、一度、開発されたものの自然条件などにより荒れ果ててしまった土地の再開発が進められた時代で、「大開墾の時代」などとも言われてきました。そういう時代の風潮を反映するかのように、この文書でも、「黒山は伐り掃うを以て主となす」と記されています。「黒山」とは、薄暗い未開の山林を象徴的に表した、この時代特有の言い方です。未開の地は、最初に樹林を伐り払って開発の手をさしのべた者が、その所有者となるのだという意味で、当時の土地所有観念をよく表した言葉と言えるでしょう。お金を出せば何でも手に入る現代とはずいぶん様子が違いますね。(学芸員 高木徳郎)
和歌山県立博物館ウェブサイト

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