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スポット展示「徳川家康をまつる紀州東照宮のお祭り」

博物館の所蔵品のなかから数点を取り上げて、
約1か月から2か月ごとに、テーマに合わせて無料で公開するスポット展示「ちょっとだけ《江戸時代》を知ろう」。

昨年(2010年)の5月からスタートしたスポット展示については→こちらをご参照ください。

12回目を迎えた今回のテーマは
徳川家康をまつる紀州東照宮のお祭り
― 和歌祭 ―

【会期:2011年4月9日(土)~5月20日(金)】

007展示の様子(画像をクリックすると拡大します)

 和歌祭は、江戸幕府を開いた徳川家康をまつる紀州東照宮の祭礼です。元和5年(1619)紀伊藩初代藩主となった家康の子・頼宣は、元和7年(1621)和歌浦に東照宮を造営します。翌年4月17日(家康の命日)に春祭りが行われ、この春祭りが「和歌祭」と呼ばれるようになりました。
 和歌祭で行われる神輿渡御は、〔先の渡り物‐練り物‐後の渡り物〕で構成され、城下町に住む武士や町人のほか、さまざまな身分の人々が参加しました。
  「江戸」から「明治」に時代が変わり、和歌祭は一時中断されることもありました。しかし、旧家臣の働きかけや和歌浦の人々の努力で復興され、今日にいたっています。今年の和歌祭は、5月15日(日)に行われる予定です。

  以下は、展示資料の解説です。

和歌祭面掛図 笹川遊原筆
 (わかまつりめんかけず ささがわゆうげんひつ)
和歌祭面掛図(画像をクリックすると拡大します)
   1幅
   絹本淡彩
   江戸時代(19世紀)
   縦35.0㎝ 横56.1㎝

 癋見(べしみ)、尉(じょう)、空吹(うそふき)とみられる仮面や頭巾(ずきん)をつけた3人の面掛が描かれています。面掛は和歌祭の練り物に登場する出し物で、明治時代以降は「百面(ひゃくめん)」と呼ばれことが多いようです。江戸時代の『紀伊国名所図会(きいのくにめいしょずえ)』には、「面掛三十九人」と記されていますが、行列に何人の面掛がいたかは必ずしも明らかではありません。
 この絵を描いたのは、紀伊藩のお抱え絵師であった笹川遊原(1829~1881)です。笹川家は遊泉(ゆうせん、初代、1767~1820)が、文化10年(1813)10代藩主徳川治宝(はるとみ)に召し抱えられました。遊原は3代目で、文久3年(1863)の状況を示す分限帳には、「御絵師 十人扶持八石 小十人格」と記されています。

和歌祭行列図絵巻 甲本
 (わかまつりぎょうれつずえまき こうほん)
13 和歌祭行列図絵巻 甲本(画像をクリックすると拡大します)
   1巻
   紙本著色
   江戸時代(18世紀)
   縦28.5㎝ 横970.6㎝

 和歌祭を描いた絵画作品としては、東照宮縁起絵巻(紀州東照宮蔵)や和歌祭礼図屏風(海善寺蔵)などが有名です。これらは、規模が縮小される寛文6年(1666)以前の和歌祭の様子を描いたものです。これに対して、今回紹介する二つの絵巻は、規模が縮小された以降の和歌祭の様子を描いたものです。
  残念ながら、錯簡(さっかん、紙の貼り違い)や欠落があり、この絵巻からは、行列の全貌(ぜんぼう)を知ることはできません。ただ、全体としては、和歌祭と町人とのかかわりを強調しようとする制作者の意図が感じられます。練り物の中心ともいえる雑賀踊の場面を展示しています。

和歌祭行列図絵巻 乙本
 (わかまつりぎょうれつずえまき おつほん)
DSC_0030 和歌祭行列図絵巻 乙本  縮小版(画像をクリックすると拡大します)
   1巻
   紙本著色
   江戸時代(18世紀)
   縦27.2㎝ 横809.6㎝

  県立博物館では、2006年に特別展『和歌祭』を開催しました。展覧会にあわせて、関連する資料を集めることもでき、和歌祭の渡御行列の構成についても、さらに明らかになってきました。
  この絵巻では、まず「先の渡り物」が描かれています。しかし、次に続くはずの雑賀踊や面掛などの「練り物」は描かれず、「後の渡り物」の場面となります。さらに、肝心の神輿(3基)の描写がありません。この絵巻の制作者は、和歌祭を大名行列のような行列と、イメージしていたのかもしれません。展示の場面は、後の渡り物に登場する楽人の部分です。「日前宮の楽人」と記されている点が、注目されます。

  このような解説とともに、資料が展示されています。
  なお、博物館の2階は、どなたでも無料でご覧いただけます。
  折々、博物館の2階を訪れて、ひと昔前の〝江戸時代〟を感じてみてはいかがでしょうか?

  ところで、昨年から始まった「スポット展示」ですが、今年度は担当者が変わりました。昨年とは違った視点で、館蔵品を紹介したいと思っています。今年度の「スポット展示 ちょっとだけ《江戸時代》を知ろう」をよろしくお願いいたします。

  4月23日(土)から始まる特別展「華麗なる紀州の装い ―かみ・ひと・ほとけをつなぐ―」では、和歌祭で使用された舞楽装束も展示する予定です。また、4月11日(月)から和歌山大学紀州経済史文化史研究所でも、特別展「みる・きく・たのしむ和歌祭」が行われるようです。

  今回のスポット展示は、5月20日(金)までです。

  次回のテーマは、「全国有数の人口を誇った城下町和歌山」を予定しています。
  (主任学芸員 前田正明)

→和歌山県立博物館ウェブサイト
→これまでのスポット展示

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