今日、最後のミュージアム・トークを行いました。
ご来館いただいた方々、本当にありがとうございました。今回の特別展でもっともお伝えしたかった、レスキュー活動について、最後にまとめさせていただきます。
2011年3月11日の東日本大震災では、家屋の倒壊や火災に加え、津波によって文化財が流出し、水損に伴うカビの繁殖と腐敗によって、資料の劣化が問題となりました。一方、9月上旬の台風12号に伴う水害によって、和歌山県南部では、文化財も被害を受けました。9月上旬という暑い時期であったため、浸水によって、カビと腐敗が急速に進みました。こうした災害時に、各地では地域の歴史を物語る文化財の保全活動が行われています。
台風12号水害での活動としては、那智川流域に収納箱を設置し、「思い出品」を収集した那智勝浦町の活動、被災した「思い出品」や学校資料・地籍図の保全を行った和歌山大学紀州経済史文化史研究所と歴史資料保全ネット・わかやまの活動、汚れた写真の修復を行ったFORWARDの活動などが挙げられます。こうした地道な文化財レスキュー活動によって、被災した文化財を後世に残すことができました。
今回の特別展では、救出された文化財を皆さんにご覧いただくとともに、レスキュー活動の一端も紹介させていただきました。
(和歌山大学生によるクリーニング)
(ボランティアによるクリーニング)
ところで、東日本大震災の反省から、文化財の保全は災害が起こる前から始めるべきである、といわれるようになりました。例えば、事前に身近にある文化財を確認し、リストを作成しておいたり、文化財の写真を撮っておいたりすることなどです。そして、実際に地震・津波・洪水などの災害に見舞われたときは、文化財のレスキューが必要となってきます。
文化財のレスキューには、専門的知識を必要とする場合もありますが、クリーニングや簡易補修などは、どなたでもできる簡単な方法です。とくに、大きな災害の際には、自分たちでできる文化財レスキューが、一段と必要になってきます。
今日で特別展は終了しましたが、将来起こるであろう災害に備えて、文化財の保全をどうすべきか、この問題についてはこれからも考えていきたいと思います。
(主任学芸員 前田正明)
→和歌山県立博物館ウェブサイト