愛徳山六所権現祭文(館蔵品1011)
クリックで画像は大きくなります
【釈文】
謹請再拝其当歳文正二年〈丁亥〉 政年且ニ
銀花発金実成有秋相応之命神祭時吉日良□
撰定王城従南紀州日高郡河上阿多木御庄跡垂
座愛徳山六所大権現之御宝前驚申令給
夫当山権現申者、成妙覚果満如来本覚真如都出
給光娑婆塵和給成入重玄門大士一度参詣運輩
現世之所願成就円満無謂事、一度信心名号触耳悪
業煩悩霧速晴六根罪障忽滅、依之権現悲願仰白、
妙御幣捧礼貴供具厳参宮礼拝実至奉所也、御願
本地慈悲等垂跡向顔笑開給種種妙供御花米
等参臨清浄也、哀愍納受令給敬白、
悦上尊次金輪聖王、天長地久、御願円満、亦者当山栄
座検校・別当・神主・衆徒・百姓、幷郡内旦那等至殊者
息災延命無辺善願由持令給、
殊者家風雨水火恐無牛馬六蓄至生益万倍之
悦持令給敬白、
永正十年〈癸酉〉八月十九日書従 愛徳山[ ](神主等ヵ)
【写真・釈文・解説】
・『道成寺と日高川―道成寺縁起と流域の宗教文化―』和歌山県立博物館、2017年
【内容】
愛徳山六所権現(日高川町の上阿田木神社・下阿田木神社)の祭文。
文正2年(1467)の祭文(祝詞)を、永正10年(1513)に愛徳山某(神主等ヵ)が書写したものです。
愛徳山権現へ一度参詣すれば現世の所願が成就し、
信心し名号を聞けば悪業煩悩がたちどころに消え、六根罪障が忽ちに消滅する、
とその効験などを記しています。
これらの功徳は、下阿田木神社が所蔵する熊野山祠縁起幷愛徳山申次第でも類似する言説が見られます。
縁起のように神様の来歴等は述べられていませんが、
祭文として末尾に功徳文が要約的に記されています。
また、「当山栄座検校・別当・神主・衆徒・百姓幷郡内旦那等」の息災延命
を祈願している点も注目され、愛徳山六所権現に関わる様々な人々について知ることができます。
特に「百姓幷郡内旦那等」とも記されるように、
鎌倉・南北朝時代の縁起と比べると、祈願の対象者がより広がっていることもわかります。
(当館学芸員 坂本亮太)