昨日(16日)、かつらぎ町移区で「移村の開発と文覚井」というテーマでお話をしました。
昨年秋、当館で特別展「紀伊国カセ田荘と文覚井」を開催した折に、
区の役員さんから、展示を見に行きたいけれど、見に行けない人もいるので、
地元で話をしてくれないかとの依頼を受けて行ったものです。
移区は現在23戸だそうですが、参加していただいたのは老若男女合わせて31人でした。
紀伊国カセ田荘絵図や文治元年の検田取帳などをもとに、移の歴史は少なくとも12世紀に遡ることができること。
今も現役として使われている「二の井」(用水路)がその原動力になったこと。
大雨にあれば暴れ川となる穴伏川(絵図では「静川」)の洪水との闘い、
また渇水期には対岸の静川荘との間での水争いが起こったことなどをお話しました。
また、近世の移村を描いた絵図も紹介しました。
話のあと、穴伏川の河床は昔にくらべて下がっている。
慶安三年賀勢田荘絵図に描かれた用水路で、二ノ井と三ノ井の間に描かれている水路は今のどこの水路だろう。
といった話が出て、皆さんで議論されているのが印象的でした。
区の役員さん、区のみなさんの「移」という地域への思いが伝わってくるひとときでした。
→和歌山県立博物館ウェブサイト
(主任学芸員 前田正明)