和歌山県立博物館マイミュージアムギャラリー
第43回展示 「赤い浴衣のおてんば娘」
【出 陳 者】 藪田 紬
【展示期間】 平成28年8月6日(土)~8月31日(水)
【出陳資料】 浴衣 現代(20世紀)
【資料をめぐる思い出】
「あんた、浴衣着て滑り台滑ってたなあ。」
毎年近所の盆踊りの時期になると、母や祖母にいわれます。私は小さいころ、とても活発でよく動き回る、いわゆる「おてんば娘」でした。そんな私を少しでもおしとやかにしようと、祖母が選び、母が着せてくれたのがこの赤い浴衣でした。しかし母の思いも虚しく私は元気に走り回り、袖が汚れています。
実はこの浴衣を着ていた記憶が私にはありませんが、大切に残してくれていたことに、家族の暖かみを感じます。私の「紬(つむぎ)」という名前も、着物に親しみのある母が付けてくれたものです。祖母と母の思いが紡(つむ)がれたこの浴衣を、私も大切にしたいと思います。
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【学芸員(実習生)の一口メモ】
浴衣の語源は、「湯帷子(ゆかたびら)」だと言われています。「湯帷子」は、平安時代に蒸し風呂でやけど防止や汗取りに使用されていたのが、室町時代になり、浴後に使用する身ぬぐいとして着用されるようになりました。そして桃山時代以降、盆踊りの際に祭礼着物として着られるようになり、それが「踊り浴衣」といわれ、いつとなく庶民の夏の着物に転じていきました。
江戸時代、浴衣はさまざまな用途に再利用されていました。浴衣を裂いて鼻緒に代用したり、布が柔らかくなるとおしめや雑巾として使われました。さいごには竈の焚き物となり、その灰を肥料や染色の媒体、洗濯の洗剤として最後まで無駄なく使い切られていました。
江戸時代の人々も、浴衣を大切にしていたことがうかがわれます。
※今回の展示は、平成28年度に和歌山県立博物館が受け入れた博物館実習生8名が作成しました。