2025年 2月1日(土)~ 3月9日(日)
熊野本宮大社を中心とする熊野への参詣は、山岳修験(さんがくしゅげん)における「擬死再生(ぎしさいせい)」、すなわち生まれ変わりの修行の一つとして行われていました。また熊野三山の一つ熊野本宮大社は、もとは熊野川の中洲(なかす)に鎮座しており、雄大な河川による恵みと猛威の歴史とともに歩んできました。第Ⅴ期の展示では、熊野本宮大社の歴史と名宝を取り上げます。あわせて、熊野信仰と密接に関わりながらも独自の展開を遂げた湯峯(ゆのみね)地区(田辺市)に伝わる文化財、さらに本宮の歴史とも深く関わる熊野川にまつわる文化財から、本宮地域の豊かな文化についてもご紹介いたします。
展示作品数38件(和歌山県指定文化財11件(有形民俗文化財含む)、新宮市指定文化財1件)
◇みどころ1 熊野御幸の様子を描く ー熊野御幸図ー ◇
平安時代後期以降、上皇(じょうこう)や女院(にょいん)、貴族による熊野詣(熊野御幸(くまのごこう))が盛んになります。白河上皇は9回、鳥羽上皇は21回、後白河上皇は34回、後鳥羽上皇は28回の熊野御幸を行っています。
熊野御幸図(くまのごこうず)【写真1】は、熊野御幸の様子を描いたものです。京都の若王子(にゃくおうじ)神社に伝来したと言われます。新宮と那智の2幅が残るのみで、本宮のものは伝わりませんが、上皇による熊野御幸の様子をうかがい知ることができる貴重な作品です。
【写真1】熊野御幸図 2幅(個人蔵)〈展示番号2〉
左が新宮幅、右が那智幅
◇みどころ2 豊臣家による本宮復興 ー神額ー ◇
神額(しんがく)【写真2】は、慶長18年(1613)に豊臣秀吉(とよとみひでよし)の子である豊臣秀頼(ひでより)が熊野本宮大社を再興するために寄進したものです。かつての中門(ちゅうもん)に掲げられていたといわれます。同じ時期、豊臣家は熊野本宮大社の復興・造営に深く関わり、様々なものを奉納しています。後の紀伊徳川家も同様に、熊野本宮大社の復興・造営を進めています。
熊野川による水害、戦乱や火災など、度重なる災害を蒙りながらも、何度も蘇り、今なお信仰を守り続ける熊野本宮大社。同社に伝えられた名宝とともに、復興・造営、また災害の歴史を振り返ります。
【写真2】和歌山県指定文化財 神額 1面(熊野本宮大社蔵)
◇みどころ3 湯峯東光寺の名宝 ー不動明王及び二童子像ー ◇
湯峯(ゆのみね)地域には王子社があり、熊野本宮大社との深い関わりがあります。その一方で、温泉地としてなど、独自の歴史を歩んできました。
不動明王坐像(ふどうみょうおうざぞう)及(およ)び二童子立像(にどうじりゅうぞう)【写真3】は、現在、湯峯東光寺(とうこうじ)で祀られている仏像です。もとは熊野本宮大社に伝えられ、熊野本宮大社の復興のなかで造られた可能性も考えられています。本展示では、湯峯地域の東光寺や湯峯王子社(ゆのみねおうじしゃ)なども含め、湯峯地域に残された宝物類を紹介します。
【写真3】和歌山県指定文化財
不動明王坐像及び二童子立像(東光寺蔵)〈展示番号33〉
◇みどころ4 常設展でも熊野本宮大社のコーナー展示を開催◇
この特別展(第Ⅴ期)の期間中、常設展示室「熊野詣」のコーナーにおいて、「熊野本宮大社 景観と歴史」と題して、熊野本宮大社に関する館蔵品16点をあわせて展示します。特別展とともに熊野本宮大社をより深く知っていただことができます。
展覧会情報
会場 | 和歌山県立博物館 1階企画展示室・常設展示室 |
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会期 | 2025年 2月1日(土)~ 3月9日(日) |
開館時間 | 9:30〜17:00(入館は16:30まで) |
休館日 | 月曜日(ただし、2月24日(月・祝)は開館し、翌日の25日(火)は休館。) |
観覧料 | 一般:520円(420円)、学生:310円(250円) ※( )内は20人以上の団体料金。 ※高校生以下・65歳以上・障害者手帳の交付を受けている方は無料。 ※和歌山県内に在学中の外国人留学生は無料。 ※毎月第1日曜日は無料日(会期中では2月2日・3月2日) ※特別展「聖地巡礼」は、2回目以降の展示見学の方について、割引があります(団体料金を適用) |
主催 | 和歌山県立博物館 |
関連事業
◇博物館講座
2月8日(土) | 丹野 拓(和歌山県世界遺産センター調査員) | 「本宮周辺の古道と遺跡」 |
2月23日(日) | 蘇理剛志(和歌山県立紀伊風土記の丘学芸員) | 「熊野本宮大社の祭と行事」 |
※いずれも 午後1時30分~3時/当館2階学習室
◇ミュージアムトーク(展示解説)
2月15日(土)、2月24日(月・祝)、3月8日(土)、3月9日(日)
※いずれも 午後1時30分~2時30分/当館企画展示室