
令和5年(2023)3月11日(土) ~ 4月23日(日)
人々は、川から水を引いて作物を育て、川を利用して船で物資を運びました。日照りが続き水不足になると、川の水をめぐって争い、物資の輸送が盛んになるにつれて、その権益をめぐる争いが起こることもありました。一方、大雨が続いたり、台風が来襲したりすると、川が増水して、時には堤防を越えて屋敷や田畑が浸水する洪水の被害を受けることもありました。近年は温暖化の影響もあって、集中豪雨などによる水害が頻発しているといわれています。
この企画展では、紀州の歴史における川と人のかかわりを、さまざまな資料から紹介します。
【展示構成】Ⅰ 名所・伝説を描く Ⅱ 人と物を運ぶ Ⅲ 水の恵みと水争い
Ⅳ 水害の記憶を後世に伝える Ⅴ発掘された慈尊院堤防
展示資料総数41件98点(うち重文1件1点、重文(附)1件1点、和歌山県指定1件1点)
みどころ
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①紀伊藩主が参勤交代や遊覧に使用した御座船のうち、河川用の船(蓬莱丸)の絵です。
紀伊藩主専用の川御座船(かわござぶね)(御召船)である蓬萊丸を描いたもの。作者は不明であるが、紀伊藩のお抱え絵師とみられる。船の中央部分には屋形がみえ、船尾の幔幕(まんまく)や船印には「三つ葉葵」が使われている。船名額(「蓬萊丸」)は、船尾まん中のデッキのうえに掲げられている。

②桛田荘(かせだのしょう)と西隣の静川荘(しずかわのしょう)との水争いで、桛田荘に有利にするため神護寺にあった絵図を写しました。
中世桛田荘の景観をシンプルな構図と図様で描いた絵図である。画面右寄りに八幡宮と堂、近景の山々には樹木が描かれ、4か所に集落がみえる。神護寺(京都市)にも同じ構図で、12~13世紀に作成された絵図がある。本図は、延徳3年(1491)頃に静川(穴伏川(あなぶしがわ))からの取水権をめぐって桛田荘(かつらぎ町)と静川荘(紀の川市)との争いが起こり、桛田荘が自らの主張を有利にするために作成した神護寺本の写しである。江戸時代初頭に改竄(かいざん)が行われた痕跡(こんせき)が4か所みられる。

③被災してから20年以上経ったのち、「水害の記憶」を忘れないように描かれました。
明治22年(1889)8月19日降り続く大雨で、山すそにあった八幡神社の社殿が、川の増水で被災しそうなり、氏子7人が大雨のなか、ご神体を抱えて避難させる様子を描く。右下に「梅峰」の署名と落款(らっかん)がある。その左側に当時の被災状況を書いた「水害記」が記されている。大正10年(1921)現在地に移築された社殿が描かれていることから、被災から20年以上経ったのち、「明治大水害の記憶」を後世に伝えるために、本図が描かれたとみられる。
展覧会情報
会場 | 和歌山県立博物館 1階 企画展示室 |
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会期 | 令和5年(2023)3月11日(土) ~ 4月23日(日) |
開館時間 | 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
休館日 | 月曜日 |
観覧料 | 一般280円(230円) 大学生170円(140円) ※( )内は20人以上の団体料金。 ※高校生以下・65歳以上・障害者手帳をお持ちの方(同伴者を含む)は無料。 ※和歌山県内に在学中の外国人留学生は無料。 ※毎月第1日曜日は無料(会期中では、4月2日)) |
主催 | 和歌山県立博物館 |
関連事業
ミュージアムトーク(学芸員による展示解説)
日時 3月11日(土)・21日(火・祝)・4月2日(日)・8日(土)・16日(日)
各回とも、13:30〜14:30
※入館の手続きをお済ませのうえ、企画展示室にお集まりください(事前申し込み不要)
※新型コロナウイルス感染症流行の状況により、中止となる場合があります。
同時開催
常設展「きのくにの歩み―人々の生活と文化―」
