
令和4(2022) 年4月23日(土)〜6月5日(日)
橋本市指定文化財 大般若経 巻131神野々・観音寺蔵(展示番号21)
大般若経(だいはんにゃきょう)は、形のあるものにこだわらないという智恵、すなわち「空(くう)」の思想を説いた経典です。飛鳥時代に日本に伝わってきたのち、疫病や自然災害など、現世のさまざまなわざわいを「空」にする、つまり取りのぞくはたらきがあるお経として、中央から地方へ広まっていきました。600巻にも及ぶ圧倒的な数量があるにもかかわらず、和歌山県内には奈良時代から明治時代初めにかけて、書写や印刷によってつくられた大般若経が少なくとも200例近く残されています。
この4年間、県立博物館は東京大学史料編纂所との共同研究で、小川八幡神社(紀美野町)に伝来する大般若経の調査を行ってきました。奈良時代から室町時代までの、手書きの経巻600巻が全て残され、とくに奈良時代の経巻が120巻も含まれており、全国的にみても大変貴重な資料であることが、あらためて確認できました。
このたびの特別展では、初公開となるこの小川八幡神社の大般若経をはじめ、県内に残されている代表的な大般若経を展示します。手をつくして、各地から大般若経を入手しようとした、人びとのいとなみや思いにふれていただければと思います。
【展示構成】
Ⅰ 小川八幡神社の大般若経
Ⅱ 一筆経(いっぴつきょう)−一人で書写した大般若経
Ⅲ 移動する大般若経
Ⅳ 版経(はんきょう)−印刷された大般若経
Ⅴ コレクションされた大般若経
展示のみどころ

①きのくにで書かれた奈良時代のお経
現在は廃絶していますが、かつて和歌山市上三毛(かみみけ)あたりにあったという御毛寺(みけでら)で書かれたお経です。『日本霊異記(にほんりょういき)』という説話集にも出てくるこの寺が、実在であったことを物語ります。また、奈良時代に、地方でも独自に写経活動が行われていたことが分かります。南北朝〜室町時代ごろに、小川八幡神社へ移されたようです。
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②一人で書写した大般若経
480万字以上にも及ぶ大般若経600巻を、書き写すことは大変なので、普通は何人かで手分けして行いますが、中には一人で書写することがありました。長保寺(ちょうほうじ)に伝わる大般若経は、堅海(けんかい)という僧が7年かけて一人で書写したものです。奥書には、経済的にサポートしてくれた人びとへの感謝も表しています。

③村人みんなで手に入れた大般若経
大般若経は、さまざまなトラブルを取りのぞくはたらきがあると信じられていたので、村にとってはどうしても手に入れたいお経でした。神野(こうの)市場(いちば)の満福寺(まんぷくじ)に伝わるお経は、もとは水間寺(みずまでら)(大阪府貝塚市)などで書写されたもので、根来寺(ねごろじ)(岩出市)から購入して十三神社(じゅうさんじんじゃ)(紀美野町)に奉納されました。財産の多少に応じて、村人がお金を出し合って購入したことが室町時代の奥書に書かれています。
*同じ写経でも、書写された時代によって書風が変わります。これも鑑賞のポイントです。
展覧会情報
会期 | 令和4(2022) 年4月23日(土)〜6月5日(日) |
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開館時間 | 9:30〜17:00(入館は16:30まで) |
休館日 | 月曜日 |
観覧料 | 一般:520円(420円)、大学生:310円(250円) ※( )内は20人以上の団体料金。 ※高校生以下・65歳以上・障害者手帳の交付を受けている方(同伴者を含む)は無料。 ※和歌山県内に在学中の外国人留学生は無料。 ※毎月第一日曜日は無料(会期中では5月1日(日)・6月5日(日)) |
主催 | 和歌山県立博物館 |
協力 | 東京大学資料編纂所 |
関連事業
博物館講座
いずれも、13:30~15:00 / 講師 竹中康彦(当館副館長)/ 会場:和歌山県立博物館2階学習室
※事前申込制(先着各20名)
4月26日(火) 9時30分より、電話:073-436-8670 で受付開始【募集は終了しました】
※新型コロナウィルス感染症流行の状況により、中止となる場合があります。
①5月8日(日) | 「和歌山県内の大般若経」 |
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②5月22日(日) | 「小川八幡神社経の魅力と謎」 |
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